高裁準備書面より

(最終データが見つからないので、原本と比較しながら掲載します)

第三 配転命令における人事権乱用

一、 本件配転交渉記録によって証明される事実関係
 

 原告は本件配転交渉の内容を録取し、甲号証として提出している。これが、交渉内容そのものである事は被告会社も認める処であり、争いはない。この内容こそが客観的事実を物語っているにもかかわらず、原判決の認定はこれらの事実を無視したものになっている。控訴審において新たに提出された証拠も含めてこれらを検証すると以下の事が証明される。


@本件配転の目的は組合役員選挙に立候補して会社の労務政策を批判した原告を排除するためになされたものであることを穴田部長自身が述べている。


A被告会社は原告に対し、賃金上の差別を行なっていたという事実をかって井上課長が認めていた。

B原告は交渉の当初より、本件配転命令の不当性を指摘していたが、被告会社はこの内容の議論をすることを拒み続けていた。


C原告は誠実に、冷静に、真摯に交渉に臨んでおり、被告会社が主張するように、交渉中に激高したり、話し合いを拒絶した事実はない。


D原審法廷において、被告会社証人穴田、井上、御手洗はそれぞれ虚偽の証言を行なっている。よってその内容は信用出来ないものである。


E原告の日記である甲第四六号証にはかって被告会社が原告に対して差別的意志を持っていることを井上課長自身が語った内容が記載されている。その内容との一致により証拠の信用性が裏付けられる。

二、 同記録によって証明される、被告会社の証人の虚偽の証言

 また、この検証により明確になる会社証人の会社証人の虚偽の証言を予め列記すると以下のようになる。

1,穴田証言

@五月十八、二〇日の交渉で原告は「家庭の事情」の話しかしなかった。(一回五丁)

A五月二〇日の交渉で原告は「腹を割って話せ」などとは言っていない。(一二回三一丁)

2,井上証言

@六月一日の交渉において原告は、「家庭の事情」の話しかしなかった。「ラジオ体操がどうとか、査定を悪くされたとか、選挙がどうとか、そういう話は何もなかった。」(第一八回調書一八丁裏)(第一九回調書七、八丁)

A六月一八日原告は明確に対話をするのを避けた。(一九回一〇丁)

B二月一二日に原告とラジオ体操について話したことを覚えていない。従って原告が体操しないでいるのを目撃したのは二、三週間の間である。

C水曜日のこどもの迎えについて「問題がないようにするから配転に応じろ」と言っていない。

3,御手洗証言

@六月一〇日、原告は激高して議論出来る状態ではなかった。

 なぜこのような虚偽の証言をしなければならなかったのか。原判決がこれら虚偽の証言に何ら触れていない事は不当だと言わざるを得ない。

三、交渉内容の検証

 そこで、敢えて証拠の引用を惜しまず、その内容を検証してみる。


まず、被告会社と原告との最初の正式な交渉である五月一八日から検証してみる。

1,五月一八日、交渉相手穴田部長 (甲第五八号証)
p1
(ノックの音)

穴田  井上君の方から・・話があったと思うんだけどそれで 
田中  ハハハ・・・・・・(「とうとうやってきましたね」と言った記憶がある)
穴田  え、いやそんな話じゃなくて、あの、ぜひ、あの、受けてもらいたいんですよね。田中  ああそうですか。

 ここで穴田が言っている「そんな話」とは、これまで穴田と原告がラジオ体操について話す中で指摘されてきた、会社が原告を嫌悪して攻撃をかけて来る可能性があるとする事が現実化したという原告の指摘であり、それを理解し、それを否定し話をそらしているのである。

p4
穴田  や、だけどさ・・・・・って話としてはさ、こー、なんかあやふやな話じゃないよなあ。

田中  いや、話はあやふやですよ。だから、ええ、僕がそのー、選挙に出てね、いろいろそのー、会社にとってまずい立場にあると。そんで、そのー、そのために井上さん自身が迷惑してるし、僕の将来もこのままじゃだめだろうと。だから、いっその事ほかの会社に行くか、あるいは事業所かわるかしないか、みたいな話があったんですよ。
穴田  んー、んー、・・・・な話だねえ、そらねえ。仕事としてはしかし、こういう、そういう制限がなければあれ、そういう事は興味ある。

 ここでは原告は、穴田に対し、かって井上課長が次の事を述べた事を指摘している。


@原告が組合役員選挙に立候補したことにより、会社が原告を嫌悪し、


A原告に対する差別が将来的にも予測され、


B原告の上司である井上までも会社から圧力を受けている、

   
C差別による不利益を回避する為、会社をかわる事を井上が示唆した。

 もし、このような事実が無根のものと穴田が思ったならば、原告と井上の上司である穴田にとっても、不穏当なものであるはずにもかかわらず、穴田はこの指摘に触れる事なく、家庭の事情がなければ仕事に関心があるか、と話題をそらしているのである。これは、原告の指摘を穴田が事実だと認識したからに他ならない。さらに。

穴田  うーん、か、考えたというのは、どういう事を、そのー例えば奥さんがね、もうやめちゃうというようなケースを考えたという事。
田中  いや、そんな事は考えないですね、それは出来ないですね。そんな事したら大変ですようちは、経済的にもまいってしまいますからね。査定が最低ですからね。あ、それから、ほんと、査定が最低の話をちょっと穴田さんから、本当は聞かなきゃいけなかったんですけどねえ。
穴田  ・・・・・・・・・・・・・
田中  しかし関係ない事はないんじゃないですか。

穴田  何が、それは井上君と話してないの。
田中  井上と、井上さんと話しましたけどね、でもちょっと納得いかないですねえ。僕は納得いかないという風に話してあるしね。まあ、あんまり事をあらだてないでくれという話だったから僕も我慢してたんですけどね。

ここで原告は


@原告は不当な査定を付けられている。


Aその事について井上課長と話し合ったが納得がいかなかった。


B井上課長が事を荒立てないでくれと頼んだので我慢していた。


C本件配転命令もこの不当な査定に見られる会社の原告に対する対応と関係があると思っている。


と明確に本件配転命令の不当性を主張しているのであり、原告は交渉の当初は配転の不当性の指摘をしなかったとする原判決の認定が誤りであることが証明される。次に、二回目の交渉である五月二〇日を検証する。

2,五月二十日、交渉相手穴田部長(甲第四十号証)

p12

穴田  .....場所変わるのが嫌だとかじゃなくてね、。

田中  いやーだからそこがネックなんですからねえ。

穴田  だからそれに対しては言えばさあ、そおいう事をね、少なくとも問題のないようにしようという事を言っているわけですから。

田中  いや、だから、実際問題ね、仕事の内容から考えた場合にそれがそのー、問題ないようになるとは思えないんですね。例えばそのー、さっき言われたように僕がむこうの所属なのに八王子に来てると、で、お客さん、あの、電話がかかって来たときには田中は八王子に行ってますよとかね、それからちょっと、あしたそのー、お客さんが話を聞きたいと言っていると、ところがあした僕は水曜日だから帰らして下さいとかね、そういう事がたんびたんびぶつかりますわね。

穴田  ...そんなには無いでしょう。だって水曜日だってなにも定時後ひっかかる時間までお客さんに付き合うという事は必ずしもあのー..

ここで

@ 穴田は原告が水曜日に子どもを迎えに行くことについて「問題ないようにする」と主張し、

A 原告はSEの業務内容からそれが実現出来ると思えないと反論している。

 
p35
田中   大いに不愉快ですね。ま、予測はしてましたけどね。ただやっぱぼくの気持ちとしてはね、僕がこれこれこういう事情で行けないというのは事実ですよ。しかしね、そのー、僕が選挙に出て、で、それから会社にとっていまだにいやな存在だと、僕は会社に協力するつもりはあるんですけどね、会社が僕をどう見てるかというのはいろんな状況で分かりますよね、その状況において僕を追い出したがっているというのもやっぱ分かりますよ。その意味でね、八王子から出ていけと、その一環だろうというのは感じますよね、それは。
穴田   そういうふうにとらなくったっていいじゃない。
田中   いやー、それは普通は取るでしょうね、僕が取らなくても世の、まわりの人は皆そういうふうに取るでしょう。
穴田   まわりの人はどうか知らないけどさあ、もしそれが
田中   それどうなんですか穴田さん。

穴田   あなたの将来の為になるんだったらいいじゃない。

 ここで原告は


@原告は組合役員選挙に立候補したために、会社から嫌悪されている事が様々な状況でわかる。


A会社が原告を追い出したがっている事がわかる。


Bこの配転は原告を八王子から追い出すためのものだと思っている。


Cこの配転は、職場の他の人にも、原告を追い出すものと見えるだろう。


と主張しているのである。
それに対し穴田は


@これら原告の主張が事実無根のものであるならば、なぜそのような事をここで主張するのかと、とがめるのが、自然な対応であるはずだが、それをせず、「そういうふうにとらなくったっていいじゃない。」という言葉で原告の捕らえ方を、消極的な形で認める発言を行っているのである。

Aまた、職場の他の人も原告と同様の認識を持つ事についても「まわりの人はどうか知ら ないけどさあ」という言葉で認めているのである。


 これら穴田の言葉は、原告の主張が事実であると穴田が認識しているから出たとしか、説明が付けられないのである。

p57
田中   ほんとに腹を割って話を出来ないんですか、穴田さんと僕は。井上さんもそうなんですけどね、今まで言ってた事を
穴田   だってー、話・・・じゃないの
田中   穴田さんの本心で今までずっと話されてるんですか僕と。で、僕が今までやって来た行動を穴田さんはどう思われますか。
穴田   ちょっとねえ、本心って言うけどねえ。
田中   ええ、
穴田   僕はこの件はほんとに本心ですよ。

田中   それでそのー、
穴田   そりゃね、そりゃま、非常に、外部から見ればど、どう見れるかも知れませんよ。ね。外部から見れば必ずしもそうは取られないかもしれないよ。だけど僕は本心ですよ。
田中   僕でなきゃ絶対だめだというのも本心なんですか。
穴田   そうです。あなたのね、あなたの将来の事も考えて本心ですよ、それは。将来という事の中には若干そういう事もあるかも知れない、あなたが言ってるような事、あのー、選挙うんぬんというような事があるかも知れない。そこまで言うんなら俺も、ね。だけどその方がね、僕はすべてがうまく行くだろうと思ってるわけです。


ここで原告は


@以前は穴田も井上も本音で「いろいろなこと」を田中に話した。


Aしかし今は本音で話していないではないか。


と指摘し

B本音を出せ、
と迫っているのである。


それに対し穴田は


@田中がそこまで言うのであれば自分も本音を言うが、


Aこの配転は職場の他の人から見れば、田中を追い出すものと見えるだろう。


B追い出す理由の一つは、田中が組合役員選挙に立候補したからである。


Cしかし八王子の外の方が田中に対する差別も弱まるから、配転を受けた方が田中のためだと確信している。


 と答えている。被告会社の管理職である穴田部長自身が、本件配転命令の真の目的が不当なものであることを認めているのである。


 ところが、穴田部長は原審法廷において「原告はこの日家庭の事情以外の事は何も言わなかった。」と虚偽の証言を行なっている。(第十一回五丁)
 原審判決が、これら穴田の発言内容、及び、虚偽の証言に全く触れていないのは(七九丁)不当であると言わざるを得ない。

 また穴田証人は乙第二一号証において以上の発言の真意を否定する陳述を行なっているが、その内容は証拠の文の前後の脈絡から全く理由になっていない事は甲第四〇、五八号証を熟読すれば明らかである。

 次に、井上課長との最初の交渉である六月一日について検証してみよう。この内容は本件配転命令が出されるにいたった背景、被告会社の労務政策を批判する原告に対し、会社や井上課長がどのように接していたかが、浮き彫りにされている。


3,六月一日、交渉相手井上課長(甲第三十号証)


一〇丁〜一三丁
田中  そのつけかたはききましたけどね。でも、去年の五月の査定の時点ではそういう言い方じゃなかったですよね。もうわすれましたか。
井上  それは、意味はわかる。意味はわかる。そういうのはわすれない。僕がさ、係長あたりの時からさあ、哲ちゃんはかなり何回か話したよね。それ・・・・いろいろ。

田中  んーんー。去年の五月の時点では、井上さんは良くつけてくれたと。そういうふう言ったんですよ。だから去年の四月のだから査定ですね。給料の査定。


井上  よくつける、よくっていうのは。


田中  僕としては、良くつけているんだと、そう言ってくれたんですよ。それで、その、この査定に関しては僕と穴田さんでつけているとしか言えないと、その言えないという意味は分かってほしいと、そいう風に言ってくれたんですよね。まあ、もうわすれましたかね。


井上  そういう話は、さあ。良くつけてるとか、悪くつけてると言うのは、本当に二人だけの話。なんで今、哲ちゃんがそう言うんかということを、僕、考えてる。


田中  ええ、だから今回に関してもね、どうなのかということですよ、だから井上さんの本心としてね。


井上  それはさ、そういうことは言えないんだよ、こういう公の場では、査定のことは、いえないんだよ。

田中  いやしかし、今の話は、公の場ですね、じゃあ、去年の五月の何日だかに、あのー、井上さんが会社の中ではなしたんですよ。


井上  ・・・それは一対一でね・・・友達として話した・・・。査定というのはさわっちゃいけない。


田中  なに、さわっちゃいけないというのはどういうことですか、そういう話題にはふれてはいけない、内容に関して言っちゃいけないと、ああ、じゃ去年の時は、まあ、たまたまそういう雰囲気で話し得たけども、今は、ちょっと、状況が違うし、と、そういうことですな。


井上  ・・・だって、人と話す時はさあ、そういう雰囲気で話す場合・・・・・・ね。その人を力づけるためにね、わざとね、そういうふうにね、まあ、ほかにへんな言葉で言えばね、力づけるためにね、良くつけたんだよって、力づけ・・・
そういう、それが上司としての部下を育てるための一つ・・・・・・・。そういうこと、僕は僕自身としてさ・・・・・・いかんなと・・・・・・。僕自身悪い時はさあ、色々慰められたりしたしね。

田中  まあ、あの時は、力づけるという事じゃなかったんですけどね、まあ、どういう話しだったかというと、結局、そのラジオ体操の話だったんですよ。それでまあ、とにかく、ラジオ体操さえ、やってくれれば、査定も良くなるし、なにもかも、うまく、いくんだがなあと、ラジオ体操やってくれ、じゃなかった、あの時は席をはずしてくれだったんすよね。ラジオ体操の時に席にいないでいてくれさえすれば、なにもかも、うまくいくと、そういう話しだったんですよ。で、井上さん自身もその時は、なんか、査定が悪かったかなんかで、非常にショックだと、で、その原因は何か良く分からんと。


井上  そういう・・・・・の話しはやめよう。


田中  うん、いまとなってはねえ、僕としてはもう大変な事態ですからね。穴田さんからは、このままいくと首になる可能性だってあると言われてますからね。だから、やっぱりそういう前提でしか話出来ないですね、僕はね。


井上  それはさ、今回のことに・・・・・・・ではない。今までさ、僕の所に居てね、四年くらい居てね、その四年のステップの中でさあ、どういう話をしてきた
か、その蓄積が全部ね、一つの約束事であると、そういう風にとられちゃ非常に困っちゃうね。・・・・・その時はこう言いましたね、その時はこう言いましたね。それで今度だけは違います、こんなことをさあ。
(中略)


井上  いろいろあったと言う、ほりおこして、それぞれ、さあ、あの時は、こう言いましたね、この時はこう言いましたね。・・・でしたね、なんて言われると、さあ、そういう二人だけの関係をね、ほりおこされるという事、自体がさあ、非常に問題だねえ。

 ここで原告は、一九八〇年五月の査定交渉の中で井上課長が以下の発言をしたと主張している。


@ 原告の査定に関し、井上は良い評価をしたのだが、(十一丁)


A 原告の査定は、表むきは穴田と井上が付けている事になっているが、実は会社が関与しているから悪くなったのだ。(同)

B 査定が悪い理由はラジオ体操に参加しないからである。(十二丁)


C 原告の行動の為、上司である井上自身も査定が悪くされたと感じている。(同)


 これに対し井上は


@ そのような話をした事を認めた上で(十一丁)(十三丁)


A それは「約束事」ではなかった、と、責任を回避しようとし、原告が指摘する内容について否定出来ないでいる。のである。(同)


B さらに、井上が原告に話した事を「二人だけの関係」とした上で(十三丁)


C それを問題にされては困ると主張し、狼狽の色を隠し得ないでいるのである。(一三丁)(三八丁)(三九丁裏)


これらの会話の内容から、原告が指摘するような発言を井上が行なって来たこと。さらには、被告会社の原告に対する対応の事実を井上課長の発言内容から確認出来るのである。
 さらに読みすすめてみよう。

三八丁 

           
田中  で、穴田さんは、その僕が承諾出来なくても、ま、辞令は出さざるを得んみたいなことで言ってられますけどね、そうなると、当然、そのー、業務命令違反になっちゃいますわね。そうすると、首になりますますからね。だからその、首になる事が分かってて、辞が出るとなると、ちょっと、また、その、この配転問題に関して見方を変えなきゃいけなくなりますからね。そのへんは当然そちらも充分分かってて言ってられると思うんですけどね。当然、僕に関するいきさつは、今まで井上さんが、そのさんざ言われたような事があるんで、去年の選挙が終わった時点でも井上さん言われましたけどね。井上さんと、あのー、こうやって話した記録というのは、そのあとで僕は必ず毎日言えに帰って日記にきちっと付けてますからね。


井上  それは個人的な話が・・・


田中   ええ、個人的なものも含めて、だからそのへんに対しての記憶は。


井上  昔のことでね、僕をいじめるんるだったら。

田中  だから、いじめるというのじゃないんです。だから僕はね、今回配転されると困ると、そういう状況のもとで、首になったら困りますからねえ。でも、今、穴田さんが言われている言われ方だとね、このままいくと僕、首になるんですよ。そうなったら、当然裁判になりますからねえ。そうなったらね、結局裁判になった以上は、その、僕にとって有利な証拠っていうのは、それは何でも出しますわね。三九丁裏


田中  ええ、それは裁判官が判断する事ですな。裁判の時に証拠として、そのどれ位能力があるかと。まあ、そういうことになりますよね。ま、そんな話は先の話ですよ。ただ、しかし、そうなったら、そうなるという事だけですよね。


井上  フェアーじゃないな。


田中  何がですか。

         
井上  その、一方的な日記でどうのこうのと。

           
 ここで原告は本件配転問題に関し以下の主張をしている。


@穴田は原告が拒否して解雇されようとも辞令を出すと言っている。(三八丁)

Aその状況からこの配転に不当な狙いがあると考えざるを得ない。(同)


B不当な狙いがあるとの認識は、井上にもあるはずだ。(同)


C原告は配転拒否を理由に解雇される危険を感じている。(三九丁)


D解雇されれば裁判で争わざるを得ない。(同7行)


E井上が発言してきた事は日記に記録してある。(三八丁)


Fこの記録は原告にとって有利な証拠となる(三九丁)


 これに対し、井上は

@原告が指摘するところの、かって井上がした発言は「個人的な話」である。


Aそれらを持ち出すのは井上を「いじめる」事になる


B井上が発言した内容を記した、原告の日記を裁判で持ち出すのは「フェアーじゃない。」


 と狼狽し、原告の指摘を否定するのではなく、消極的な形で認めつつ、原告の対決する姿勢をなじっているのである。原告の指摘が現実のものであることが、ここでも証明されている。原判決はこれらの事実について全く触れておらず(八〇丁)不当なものと言わざるを得ない。

 井上が虚偽の証言を行った目的は原告が当初「家庭の事情」で配転を拒否し、それだけでは拒否できないと悟って、のちに捏造した「差別問題」を持ちだして意思をとおそうとしたとする、筋書を作るがためである。この筋書は被告会社の一貫した姿勢でもある。

 井上はこの日六月一日、原告は「家庭の事情」以外の主張はしなかったと証言しているが、(第一八回調書p18裏)(第一九回調書p7、8)これらが虚偽の証言であることが明確にされたのである。


 またこの日「家庭の事情」について再三話を持ち出しているのは原告ではなく井上の方である事を見逃してはならない。
(p2裏1行)(p7表7行〜)(p8表6行〜)

 井上は子供を迎えに行く事に支障がないようにするから配転に応じろと迫っているのに対し、原告は仕事の内容から考えて、支障が無いように出来るはずがない、と応じており、この話の内容の大部分は、出来る、出来ないの議論となっている。また、原告は、出来るという事は信用出来ないから、文書で示せと主張しているのである。


(p8表裏)(p9表裏)(p10表)(p14裏)(p16表裏)(p17表)
(p22裏)(p25裏)(p26表裏)(p27表)(p30裏)(p33表裏)(p36表裏)(p37表裏)(p38表)


 これほどまでに、「子供を迎えに行く事を支障の無いようにするから、承諾せよ。」とする井上の主張は、守るつもりの全くなかったものであった事は、以下の原審公判での井上の証言に表れている。

「いえ、私はそういうふうに申しておりません。(中略)SEの仕事というのは八王子でのデーター採りの仕事もありますので、水曜日にそれをあてることも、もしかしたらできるかもしれないと申しました。」(第一九回8丁裏)

 井上証人は虚偽の証言を行った事が明白である。

原告の日記である甲四十六号証の内容と甲三十号証における交渉内容での発言には以下の一致点が見られる。

 @原告は仕事の上で業績を上げていたので井上課長は原告の評価を良くつけていた。

 Aしかし、会社(総務課)によって結果が悪くなっている。その原因は原告がラジオ体操に着席して抗議しているからだ。

 B原告の行動の為、上司である井上課長まで査定を悪くされた。

 これは、甲四十六号証の内容が事実であることを語っているのである。