表2 主要先進国の学校における国旗・国歌の扱い
(『世界の国旗と国歌』=1991年・岩波ブックレット掲載の各国大使館回答による)
. 〔学校での扱い〕 〔学校行事での国旗掲揚〕
イギリス とくに教えない しない
イタリア 由来は教えるが扱いは学校一任 学校の判断による
オーストラリア 扱いは学校に一任 学校の判断による
カナダ (多民族国家なので国旗は必要。あらゆる場合に掲揚) .
スイス 歴史の授業で。学校一任 学校の判断による
スウェーデン (国旗には親しみをもち個人的な祝いにも揚げることがある) .
デンマーク 教えない 掲揚しない
ドイツ 学校に一任 比較的まれ
ノルウェー 学校に一任 掲揚しない
フランス 歴史の授業で教える 掲揚しない
ベルギー 学校に一任 しない



 【表2】にあるように、サミット加盟国で日本のように学校で国旗・国歌を強制している国はありません(イギリス系住民とフランス系住民の融和に心をくだいているカナダが「あらゆる場合に掲揚」と答えているのが唯一の例外です)。

アメリカ在住の文学者・米谷ふみ子さんが最近、新聞に書いた文章からも、このことはうかがえます。

私の息子の嫁が、ドイツ生まれオランダで育ったから、『学校で国旗に宣誓とかあったの』とたずねると、『そ−んなことドイツでもオランダでも、したことはなかったわ』と驚いたように言われた。フランスの領事館に電話してたずねてみると『フランス人に政府の言うことを聞けと言えると思いますか? そんなこと法律にしたら革命が起こりますよ。ネバー』ということであった。日本の文部省は何が教育であるか熟考したことがあるのだろうか?」(「朝日新聞」1999年6月14日)

 そもそも、これらの先進国の多くは入学式や卒業式などを仰々しく行う習慣はないようです。国によっては子どもが生まれた月ごとに、それぞれ入学したり卒業したりするそうです。日本では明治以来、儀式を天皇イデオロギー教育の場として重視してきたため、現在でも儀式をおおげさに考える風潮が残っているように思われます。

 外国での国旗・国歌の扱いが国会の場でも取り上げられたため、日本政府はサミット加盟国で学校において国旗・国歌を強制している国はないことを認めざるをえませんでした。すると今度は、“サミット加盟国だけが外国じゃない方というようなことを言い始めています。確かに、新興国や、アメリカに抑圧されている国ではナショナリ

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ズムが非常に強く、国旗や国歌を学校で扱う国も多いようです。「ここがヘンだよ日本人」というテレビ番組を見ていても、アジア・アフリカ諸国の人はよくも悪くも強烈なナショナリズムの意識をもっていることが分かります。
それは歴史的に見てよく理解できます。それにしても日ごろ、アメリカ一辺倒で、これらの国のナショナルな主張に耳を傾けないことの多い日本政府が、国旗・国歌の強制のときだけ、引き合いに出すというのは笑止です。



あなたは「君が代」をうたいますか?市野宗彦