高裁証人尋問

新江隆さん

新江さんは私の友人北野さんの同僚で友人であり私とは面識がなかったにもかかわらず証言して下さった。

組合役員選挙の際、会社が新江さんに会社候補者の応援演説をすることを求めた下りが特に当時の状況をよく表していると思う。

また、会社が私への配転命令の「業務上の必要性」の根拠として会社は「4000シリーズ」のパターン設計の経験が私にあることを主張したが、新江さんはパターン設計の知識はサービスエンジニアには必要ではなく、配転が適材でないと証言している。


事件の表示 平成二年(ネ)第一四四五号

証 人 調 書 
この調書は第五回口頭弁論調書と一体となるものである。
期日 平成三年七月一一日午後一時〇〇分
氏  名 新江 隆

年  齢 昭和二四年 四月 一七日 生

職  業 会社員

住  所

宣誓その 他 の状況

裁判長は、宣誓の趣旨を告げ、証人がうそをいった場合の罰を注意し、別紙宣誓書を読みあげさせてその誓いをさせた。
後に尋問されることになっている証人は、在廷しない。


速  記  録
平成三年 七 月一一
第  五 回 口 頭 弁 論

事件番号
平成二年(ネ)第一四四五号
証  人

氏    名
新  江    隆


控訴代理人 (志田)

     証人は沖電気に在職されていたことがありますね。

         はい、ございます。

     沖電気に入社したのは、いつなんでしょうか。

        一九七三年の四月でございます。

     入社したときの職場はどちらですか。

        開発本部端末機研究部光応用機器研究室という研究室に所属しました。


   一九七八年に沖電気で指名解雇があったわけですけれども、そのときの証人の職場はどちらでしょうか。

        情報機器研究所ディスプレー研究室という部屋でございます。

その指名解雇のときなんですけれども、証人はどのような行動をとられまし

たか。

   あくまでも指名解雇には反対という立場で、解雇の撤回を訴えるビラ

   配りを手伝っておりました。

証人は指名解雇の前に、組合の役員だったとか、あるいは組合活動に積極的

に参加するとか、そういうようなことはあったんでしょうか。

   いえ、特にそういったことはございませんで、義務的な集会に出ると

   いった程度で、積極的な活動というのは全然しておりませんでした。

特に組合活動には積極的に参加していなかったわけだけれども、そのときに

はビラを配るというような、かなり積極的な行動をとられたというのは、ど

ういう理由なんでしょうか。

   やはり、その指名解雇そのものが納得できるものではなかったという

   気持ちからです。

証人がビラ配りをしているということについて、上司から何か言われたこと

がありますか。
   はい、ございます。その当時の研究所長の立場の関口所長という方が
   おられたんですけれども、その人に就業時間中、所長室に呼ばれまし

   て、ビラ配りをやめてほしいというようなことを言われました。

就業時間中ということですが、時間的にはどのぐらい。
   一五分ぐらいだったと思います。

呼ばれたというのは一回ですか。

   いえ、二回呼ばれました。

今、研究所長というふうにおっしゃられましたけれども、大体会社の役職で

いうと、どういう役職に当たるんでしょうか。
   一般的な会社では、部長に相当する役職でございます。

ビラ配りをやめたほうがいいというふうに言われたということでしたね。

    はい。

それに対して証人はどのようにお答えになりましたか。

    私自身は、やはり解雇自体が納得できるものではないので、ビラ配り

    はやめないというふうに答えました。

それに対して所長さんは、証人に何か言われましたか。

    気持ちとしてはよく分かるし、私も若いころはそうだったと。しかし、

    もう一度考え直してみてくれというようなことでした。
     
なんとか考え直して、ビラ配りをやめてほしいと、こういうことなんですね。

    はい、そうです。

その後、会社の証人に対する処遇といいますか、取扱いが変わったというこ

とがありますでしょうか。

   それ以降、徐々にですけれども、周りの同僚とかが話しかけなくなっ

   てきたというような状況になりました。

以前は同僚とはどういう関係だったんですか。

   それは仕事が終われば一緒に飲みにいくことをするような、いわゆる
普通の間柄でした。

そういう普通の同僚としての会話といいますか、話しかけというのを周りの

人がしなくなったということなんですか。

    はい。
                                                         ヽ
そういう話しかけなくなったということについて、原因はどういうところに

あるというように考えられましたか。

   私自身は、それは会社のほうから、余り話しかけないようにという圧

   力がかかったのではないかと思っております。

何か具体例がありますでしょうか。
   当時私の職場に、沖電気の子会社でありますが、沖エンジニアリング
   という会社がございますけれども、そこから出向に来ていた方で木村
   さんという人がいたんですけれども、その人とは個人的にも仲良かっ
   たんで、会社の行き帰り等も、一緒に帰ったりしていたんですけれど
   も、その人がある日総務課に呼ばれまして、私とは口をきくなと言わ

   れたということを私に伝えてくれました。

仕事の面では何か変化があったんでしょうか。
   一九七九年当時に組織変更がございまして、私はその組織変更のある
   前には、ディスプレー研究室という部屋でサーマルディスプレーとい
   う装置を、メインになって研究開発を行っていたんですけれども、そ
   の仕事からは外されましてほかの部屋に移されました。その仕事とい

   うのは、今まで担当していなかったほかの人が肩代わりするというよ

   うな状況でしたので、私は故意に外されたというふうに思いました。

そうすると、サーマルディスプレーの仕事というのは、まだ途中だったわけ

ですね。

   そうでございます。

あなたが中心的にやっていた仕事だと。

   はい、そうでございます。

そういう仕事から途中で変えるということは、通常は考えられないことなん
                                   
ですね。

   ええ、私のそれまでの経験ではないことでしたんで。

あなたのほうでは、会社からいやがらせで外されたというふうに思ったわけ

ですか。

    そうです。

賃金の点についてお聞きいたしますが、賃金の面ではどうですか。

   そういう行動をとる以前の状況といいますのは、私自身、体を壊しま

   して六か月ほど病欠をしたことがございますけれども、そのときにマ
   イナスの査定を受けただけで、それ以外はほとんど普通の査定だった
   んですけれども、そういう行動をとってからというのは、査定がやや
   劣るというような評価になったと記憶しております。


その理由については、証人のほうで上司などに、どうしてこうなったのかと
いうことはお聞きになりましたか。


   はい。当然私は納得できなかったもんですから、なぜそういう査定に
   なったのかということは、その当時の研究室長である風間室長という

   方に聞きにまいりました。


室長というのは、大体会社の役職で言うと、どういうものですか。

   課長に相当するものでございます。


その室長の方は、証人のそういう質問に対して何と答えましたか。


   特に納得できるような返答というのは、そのときにはございませんで

  した。

証人としては、マイナス査定になったということについては、理由はどう考

えましたか。

   一つはビラを配っていたこととか、それ以後はビラを受け取るという
   ような行為も入ると思うんですけれども、それとか、就業時刻前のラ

   ジオ体操というものがございまして、それをしないとか、あとは会社

   の、就業時間内の合同行事とかに出席しませんでしたので、そういう

    ことから判断されたんだと思います。

会社に対する抵抗的な姿勢を持っているんではないかというふうに見られた

ということが原因だということですか。

    はい、そうです。

ラジオ体操に、先程、参加されなかったというふうにお答えになりましたけ

れども、参加しなかったということで、どなたかに何か言われたことがあり

ますか。


   私がはっきり記憶していますのは、一九八一年の、その当時の研究室
   長であります安孫子室長という方がおられたんですけれども、その人
   に就業時間中に室長の席に呼ばれまして、君がラジオ体操をしないと、
   君が変なふうに見られるばかりでなく、室長である私自身も変なふう
   に見られるので、なんとかラジオ体操をやってくれないかというよう

   なことは言われました。

時間はどのくらいの時間なんですか。

   一〇分程度だったと思います。


単に個人的に何かものを言うというのではなくて、業務上の指示というよう
な形であなたにもお話しになったんですね。

   そうですね、私自身もそのように受け取りました。
ビラの受け取りについてお聞きいたしますけれども、ビラを受け取った人に

会社が何か言ったというような事実はご存じですか。

   私自身は言われなかったんですけれども、その当時、指名解雇以後、

   新規に採用された人とか、中途採用された人というのは新入社員の教

   育を受けるんですけれども、そのときに、ビラは受け取るなというよ
   うなことを言われたと、途中採用の人が私に話してくれました。

ビラの受け取りを会社が監視しているということはご存じですね。

   はい、知っております。

どういう形で監視していましたか。

   指名解雇の直後といいますのは、ビラを配るという行為は会社の門前

   で行われていたんですけれども、門前でビラを受け取るかどうかを監

   視するためにテレビカメラが設けられました。それ以後ビラを受け取

   りにくくなったということで、ビラ配りの場所というのが会社から少
   し離れた場所、高尾という駅の前に移されまして、そこで配られたん

   ですけれども、そこの場においても、会社から受け取るかどうかの監
   視に来ているということが言われていました。


高尾駅から八王子の事業所まで、歩いて一〇分ぐらいありますよね。

    はい、そうです。


テレビカメラが設置されちゃって受け取りにくくなったので、高尾駅でビラ
配りをしたら、それもやっぱり会社の人が見にきているという状態ですか。

    そうです


組合の役員選挙に、会社がなんらかの形で関与していたという事実はご存じ

ですか。


   はい、知っております。一九八〇年に組合の選挙が行われたんですけ
   れども、そのときに私の直属の上司であります本間主任という人に、
   就業時間中なんですけれども、周りに人がいないところで、今度立候
   補する古谷という人の応援演説をしてくれないかと言われまして、今
   君は周りからは変な目で見られているけれども、そこで応援演説をす

   ることによって会社の見方が変わりますよ。そこで応援演説をすれば、

   今会社が同じバスに乗って同じ方向に進もうとしている、そのバスに

   君も乗ることができますよというようなことを言われました。場合に
   よっては、私自身が立候補してくれてもいいんだというようなことを

   言われました。

そのほかに、一九八〇年の選挙についてご存じなことはありますか。先程、

主任の話に出てきた、立候補した古谷さんという方は、立候補した後どうな

りましたか。

   その当時、おそらイ会社から指名されて立候補したということだと思
   うんですけれども、そういった立場で立候補して、実際に組合のなん

   らかの委員なり役員なりをやった人たちというのは、その後主任とい

   う立場になったというような例が相次ぎました。

そうすると、同期の人よりもかなり早く出世するというような状況だったと

いうことですか。


   そうですね。古谷という人なんですけれども、私と同期なんですけれ
   ども、私の目から見て、業務上特に優れているとかというふうには見
   えない人でも、そういう組合の委員をすることによって、取り立てて

   もらったというような印象を受けました。

控訴人の田中さんとは面識がございましたか。

   いえ、面識はございませんでした。

一九八〇年の選挙に立候補したということはご存じですね。

    はい、知っております。

田中さんが立候補したということを知って、証人はどう思いましたか。

   そのときの選挙といいますのは、会社側に推されて立候補した人がほ

   とんどでございまして、それに明らかに反対の立場で立ったというこ

   とで、私自身は頼もしく思っていたんです。

田中さんが配転されて、それを断って解雇をされたという事件は、いつ知り

ましたか。

   私はまだ沖電気に在職していましたので、それは知っておりました。

そのときに証人は、解雇という事件についてどう考えられましたか。

   田中さんほどではない私でさえ、先程言いましたような扱いを受けた

   ということで、田中さんの場合は明らかな行動をとったわけで、それ

   に対する会社の不当な配転と、それを拒否することによって不当な解

   雇を受けたんだと思いました。

証人が沖電気を退職されたのはいつですか。

   一九八四年の一一月でございます。

現在の証人の所属している会社は、どういう会社ですか。

   株式会社造研という会社でございまして、電子機器の設計及び製造を

   行っている会社です。
証人は、その会社でどのような仕事をしていらっしゃいますか。
  私自身は、そこで電子回路の設計及びソフトの設計を行っております。
そのお仕事をしている上で、四〇〇〇シリーズのICは使うことがあります
か。

    はい、ございlます。

沖電気の四〇〇〇シリーズのICというものをお使いになりますか。

    はい、使うこともございます。
四〇〇〇シリーズのICを使う側として、サービスエンジニアに何かあなた
のほうで質問した.いというようなことはありますか。


   四〇〇〇シリーズといいますのは、いわゆるICの中でも汎用的なI

   Cでございまして、そういう汎用的なICといいますのは、ICの特

   性とか性能とか機能とかといったものを主に書いていますデータブッ

   クがございまして、設計者自身は、そのデータブックがあれば回路設

   計ができるような状況で、特にSEに質問するといったようなことは

   ございません。

乙第一〇号証を示す


     三一ページを示します。ここにMSM四〇〇一BRSというようなことが書
     いてありまして、下に説明が書いてあるんですが、データブックの説明とい

     うのは、ここに書いてあるようなことなんですね。

         そうでございます。

     これを見れば、機能だとか、どういうふうに使うかということについては、

     使う側としては全部分かるということなんですね。

         はい、そうです。

     このデータブック以外に、何か特にサービスエンジニアに質問しなければな

     らないようなことはありますか。

         私は設計関係を一二年ほど行っているんですけれども、その限りにお
         いては、そういう経験はございま.せんでした。


例えば、四〇〇〇シリーズのICというものを使っていて、何かトラブルが
起きたというような場合に、サービスエンジニアに聞くというようなことは
ありますか。


   汎用的なICでございますんで、めったに故障するというようなこと
   はないんですけれども、たまたま壊れていることが判明したとします
   と、IC自体価格的に数十円から百数十円程度のものですんで、その
   場で即交換して、動くことを確認して、それでおしまいということが
   ほとんどでございます。


トラブルが起きた場合に、それをわざわざSEに問い合わせるなどという面
倒なことはしないで、別の部品をすぐ取り替えて使うということなんですね。


   はい、そうでございます。

価格的にいっても、数十円から百数十円の価格だから、故障のあるものは取
り替えればよいということですね。

    そうでございます。


そういう機能についてとか、あるいは故障が起こったというような場合に、
パターン設計がどうなっているかというようなことについて、サービスエン
ジニアに問い合わせるなどというようなことはありうるでしょうか。


   現実的には、そういうICでも、例えば一つが高価なもので、そうい
   うことが発生する場合がございますけれども、その場合、原因を究明
   してもらうことはありうるんですけれども、そのときに、ICのパタ

   ーンがどうなっているかというようなことを質問することはございま

   せん。


四〇〇〇シリーズのような比較的価格の安いICについては、SEに質問す
るということが、そもそも余り考えられないと。

   そうでございます。


かなり高価なものであって、仮に質問するということがあったとしても、そ
れはパターンではなくて、回路について質問するんだと。


   そうですね、それに答えていただくためには、電子回路総体の技術と
   いうものが、答えていただく人になければ、多分答えられないという

   ことだと思います。


沖電気の四〇〇〇シリーズのICというのは、比較的よく使いますか、証人
のほうでは。

    はい、使います。


四〇〇〇シリーズのICを使うときに、例えば沖電気のとか、あるいは東芝
のとか、そういうことでメーカーを指定してお買いになるわけですか。


   汎用的なICに関しましては、私どものほうでは、実際にそのときに
   手に入りやすいものを使いまして、特にメーカーを指定するといった

         ようなことは余りございません。

    四〇〇〇シリーズについて言うと、四〇〇〇シリーズのこのICが欲しいの

    だということで指定するだけで、メーカーを指定するということは余りない

    と。

         そうでございます。                         へ

    どのメーカーのものを使うかということについては、そうすると、どういう

    基準で考えられるわけですか。

        私が考えられますのは、例えば、過去に故障が多かったとかといった

        ものがあった場合には、そのメーカーのものは避けるけれども、それ

        以外の場合は、通常ですと、どこのメーカーを標準にするというよう

        なことで決めるぐらいで、そんなにこだわりはないと思います。

控訴代理人 (西畠)

    今、四〇〇〇シリーズのSEの仕事について質問があったんですが、そのと

きに、もしユーザーとしてSEに質由するとすれば、パターンではなくて、
回路総体の知識を持っているということを前提に質問するというふうにおっ
しゃいましたね。

    はい。


それはICの中の回路についての知識があるかどうかが問題なんですか。そ
れとも、ICを組み込んだ機器そのものの、回路全体のつながりについても
知識があるということを指しておられるんですか。


   それはICにもよりますけれども、質問するときは、技術的にメーカ
   ーに内容を問い合わせすることはございますけれども、その場合には、
   
   ICそのものも相手の人がご存じでないといけないし、その使い方と
   か、その辺まで知っていないと、こちらの希望するような答えは返っ
   てこないということです。


要するに、IC内部のパターンについてだけ知識があったとしても、それで
は質問の答えはできないということは言えるわけですね。

        はい、私はそう思います。

披控訴代理人

ビラ配りについて、関口所長から呼ばれて注意を受けたというか、ビラは受
け取らないほうがいいと、こういうふうに言われたんですね。


   私の場合は、配るなということで言われました。

そのビラというのは、整理解雇をやった沖電気がけしからんのだと。

   けしからんといいますか、指名解雇自体が不当なもので、指名解雇を

   撤回させるというような内容のビラでございます。

関口所長とすれば、できればそういうビラ配りなどはやめてもらえないかと、

こう言われたというんですね。

    そうでございます。

もしやめないと、あなたに対して不利益な事態が起こりますよというような

ことを言いましたか。

   いや、そういうことは明言はしていません。


二回とも、できればそういうビラ配りみたいなものはやめてくれないかと、

こういうことだったと。

   そうです。ビラ配りはやめてほしいというような内容でした。

あなたは二回言われた結果、ビラ配りはやめたんですか。

   その結果としては、やめておりません。

その後も続けてやっておられたと、こういうことですか。

   はい。二、三か月ほど続けたと思います。


子会社の沖エンジニアリングの木村さんと話をするのはやめたほうがいいと、

こう言われたというんですか。

   私自身がではなくて、木村さんという方が私と話をするなと言われた

   と。

その木村さんは、だれにそういうことを言われたと言いましたか。

   総務課に呼ばれて言われたと言いました。

総務課のだれだれさんにこういうふうに言われたけれども、という話で、そ
のだれだれは分からないんですか。

   そこまで記憶にないんですけれども。

風間室長にあなたは、病気をした後にやや劣るという査定を受けたので、ど

うも納得がいかないということで話をされたと。

控訴代理人 (中川)

    誤導になると思うんですが、風間室長から言われた打は病気の結果ではない

     はずなんですが。

披控訴代理人

   その言われる前に、あなたはちょっと病気をされて休まれたことがあったと。

         そう言われる前といいますか、それは入社してすぐのことですんで、

         年代的には一九七四年のことでございます。


なんでやや劣ると付けられたのかと、こう言ったのに対していろいろ説明を

受けたけれども、納得するような説明はなかったと。


   はい。職務上特に問題になるようなことはないというようなことは言

    われました。

具体的にどんなことを言われたんですか。


   例えば私自身の仕事に対する姿勢とか、その辺は問題はないというよ
   うな言われ方です。その件に関しましては私自身は、ラジオ体操をし
   ないことが関係するのかというようなことを逆に聞いたんですけれど

   も、それに対する明確な返答はなかったということです。

証人の仕事は大変丁寧なんだけれども、仕事が遅すぎるんだというようなこ

とは言われませんでしたか。

    それは言われておりません。

本当ですか。

    はい。

たとえ出来が良くても、遅いとやっぱり困ることもあるんだというようなこ

とは言われませんでしたか。

   私の記憶では、そういったことを言われた記憶はございません。

あなたは、自分が責任ある立場にいたのに課を変えられたとかなんとかおっ

しゃいましたね。外されたとかおっしゃったでしょう。

    はい。

外れて、あなたは今度どういう職場に行かれたんですか。

   機能部品研究室という部屋に変わったんですけれども、今までの研究

   開発といいますのは、数人でチームを組んで行うことがほとんどなん

   ですけれども、部屋を変わった先では、チームではなく私一人で行う

   仕事に変えられました。

あなたが一人でやるということは、いわば仕事とすれば、自分一人でやるん
ですから、責任のある仕事に就いたと言えば言えなくもないですね。


   一つは、研究開発する上で開発計画というものがございまして、いつ
   いつまでにどの程度のものを仕上げるとか、そういう計画は必ず存在
   するんですけれども、それに関しては、日程的なものは余り言われな
   かったと記憶しております。


今度の仕事については、あんまり厳しく、いつまでにこういう仕事をしなさ
いというようなことは言われなくなったと。

    はい。  
ラジオ体操について、やったほうがいいんだというようなことを言われたと
いうんですけれども、皆さんがラジオ体操をしているときに職場へ入りまし
て、あなたやほかの人が体操をしないような状況が続いたんですか。
   はい、そうでございます。私自身はその場にいることもございました

   けれども、例えば朝、違う部屋に、実験室等に行っているということ

   のほうが多かったと思います。

そうですね。そうですねと私が言ったのは、むしろ、あなたが時間ぎりぎり

に職場に入られるようなのが多くて、ラジオ体操をみんながしているのに、

ラジオ体繰に参加しないというような、そういうような状況というのは余り

なかったんじゃありませんか。違いますか。

   それは周りの人がということですか。

むしろあなたが、時間正確にというのか、職場に入られたけれども、ラジオ

体操に関しては、みんながやっているのに、自分だけがやらないで職場にい

るというようなことは余りなかったんではないですかということを伺ってい

るんです。

   事実、そういう場合もございました。

選挙なんですが、先程あなたが、古谷さんの応援をやってくれないかと本間

主任という人に頼まれたというんですが、その本間主任という人も組合員の
一人であることは間違いないですね。

         そうです。

乙第一〇号証を示す
   四〇〇〇シリーズに関しましてほ、四〇〇〇シリーズが開発できますと同時
   に、サービスエンジニアというか、SEなんぞは要らない状況になっちゃう

   というようなお話ですか。


       いえ、実際的には、四〇〇〇シリーズ自体が、国際標準規格というよ
       うなものがございまして、各社とも、その規格を満足するようなもの
       を作っていますんで、それはどこの会社が先に作ろうが、設計する立
       場の者としましては、こういったものがあれば、その時点でデータブ
       ックを見ることによって設計を始めるということです。


   少なくともデータブックがすぐできるわけではないんでしょう。開発と同時

にできちゃうんですか。

    市場に流れれば、当然データブックというものは出ると思います、そ

    の時点で。


商品化されてくれば、データブックというものが同時に出されることになる

んですか。                                  

   そうですね。そうでないと、設計する者は使えませんので。

あなたのお話では、開発して商品化されて売り出されますと、もうSEは置

いておく必要は、いわば原則としてはないんだというお話ですか。

    こういった汎用的なICといいますと、使う側の立場としては、SE

    の人に特に聞くようなことはございませんということです。

最初から。

    そうです。

だんだんと開発が進んで技術が進んで、いろんな商品が多様化して、技術も

    定着化していく、そういう時の流れとともに確かにSEは、ある時期までく
    れば、それほど必要でなくなるというようなことがあるかもしれませんけれ
    ども、そういうことではなくて、最初から四〇〇〇シリーズはSEなんか置

    いておく必要性というのはないと、こういうお話ですか。

        四〇〇〇シリーズに関しましても、国際的にはもう確立されて、その

        当時出回っていたものですので、沖電気が始めたころに、そういうよ

        うなSEに聞くような状況ではなかったということです。

控訴代理人 (志田)


    データブックの話なんですけれども、四〇〇〇シリーズについては、沖電気
    の商品を使うときには沖電気のデータブック、東芝の商品を使うときには東

    芝のデータブックを見るというような状況なんですか。

        ICを買う場合でもそうなんですけれども、購入する先の代理店とい

        うものがございまして、その代理店が、どこのメーカーには強いけれ

   ども、どこのメーカーには弱いといったような情報もございまして、
   データブックに関しましても、手に入りやすいものがあれば、どこか

   一つのメーカーのデータブックがあれば、それで用は足りるというこ

   とでございます。


沖電気の四〇〇〇シリーズを使う場合に、東芝のデータブックを見て使うと
いうことは、当然ありうるわけですね。

    それはありえます。

先程、ラジオ体操をしてほしいというふうに言われたということに関連して

披控訴人の代理人のほうから聞かれたんですけれども、ラジオ体操をしたく

ないというふうに思っていた人は、皆さんがラジオ体操をしているというふ

うに横で見ているというようなことではなくで、なるべくぎりぎりに行くと

いうような方法で、ラジオ体操をしないようにすませていたというのが実情

なんじゃないですか。

       そうですね。明らかに態度表明はしたくないけれども、自分はあんな

       ふうにやりたくないと思っている人たちというのは、本当に時間ぎり

       ぎりに来るか、あるいは終わるまで別の場所にいて、終わったころ出

       てくるとかというような状況だったと思います。

    そういうことも含めて、会社のほうは、そういう形でラジオ体操に参加しな

    いということも困るから、安孫子室長という人が、体操をしてほしいという

    ことを就業時間中に証人に話をしたということなんですね。

         そうです。

控訴代理人 (西畠)

    四〇〇〇シリーズのICの話なんですが、一九八一年ごろ、田中さんが配転

    になろうとしたころには、四〇〇〇シリーズというのは既に相当市場に出回

    っていて、データブックを、どこの会社のでも手に入れさえすれば、四〇〇

    〇シリーズについては大体規格が分かるという状態になっていたということ

ですか。

   その辺に関しましては、私も確かな記憶というものはございませんで、

   ただ、現在私自身が使っていますデータブックといいますのは、沖電

   気のものではないんですけれども、三菱の一九八三年のデータブック
   というものを使っていますので、その厚さからすれば乙第一〇号証の

   三倍程度はございますんで、一九八三年のときに、これの三倍程度出

   ていたということは、一九八一年当時でもかなりのものが出来上がっ

   ていたと思います。

四〇〇〇シリーズの汎用ICとしての性格上、どこかのデータブックを入手

すれば、国際規格に大体合っているということで、ほかのに使っても大丈夫

だと。通常ユーザーとしてはそういう判断をするということなんですね。

   ユーザーとしても判断しますし、四〇〇〇シリーズを作るメーカー側

   も、最低基準として、国際標準規格を満足するように作るということ
    です。

先程のお話ですと、四〇〇〇シリーズのSE、サービスエンジニアがいると
しても、SEに実際に故障等について質問をして、あるいは使い方等につい

て質問をして、その場で答えてほしいということはほとんどないと。

   私自身の経験からいってもございませんでした。

もし聞くことがあるとすれば、それはメーカーのほうの開発側に問い合わせ

て、きちんとした答えを返してもらうべきものが多いと。

   そうですね。質問するときによりましては、もともと設計する上で必

   要なことを聞くわけですから、相手のほうも、その設計するだけの能

   力がなければ答えることができないような質問をするわけですから。

設計というのは、回路設計とパターン設計がありますね。どちらの設計です

か。

    回路の設計です。

要するに、電子回路的な知識を持っていないと答えられないような質問であ

るということですか。

   そうでございます。

SEというよりも、むしろセールスマンとして一般的に考えられるのは、四

〇〇〇シリーズを売り込む上で、沖電気の四〇〇〇シリーズは優れています

よというのを言うだろうというのは、素人から見れば想像するんですが、四

〇〇〇シリーズのような汎用ICの場合に、沖電気だけが設計上優れている

と、そういうことはほとんど予想できないと聞いてよろしいですか。

    はい。実質上、どこが優れているというような判断を設計者は余りし

    ないと思います。

むしろ、セールスマンとしての一般的な営業能力といいますか、売り込みの

能力のほうがSEとしての適格性があると、こう考えていいですか。

    そうですね。



東京高等裁判所第一四民事郎
     裁判所速記官 津田千鶴



                                 2004.1.20掲載