石川中裁判を支える会々報NO.4

2001年9月30日(日)発行  
ほうせんか
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第2回公判、大勢の傍聴者で成功
成嶋教授意見書が大きく影響

 2回目の公判も多くの人に支えられ新たな発展の芽が生まれました。ありがとうございます。公判前に提出した新潟大学の教育法学、成嶋教授の意見書が大きな力を発揮したと思われます。これからも様々な方からの意見書を提出する予定です。皆様からも、裁判の勝利に向けてご意見等お寄せください。宜しくお願い致します。         
第2回公判を終えての弁護士談                文責 編集部


今日(8/23)、被告側からは、前回のこちらの求釈明(質問書)に対する回答と若干の証拠書類が出されてきただけである。まず、我々の前回の求釈明第1点の「授業内容への違法不当な支配介入という我々の主張に対し被告は何らかの反論をする予定があるのか」という点に関しては、旭川学力テスト事件最高裁判決のさわりの一部分だけを引用して『 …必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが、相当である』と言っている。旭川学テ最高裁判決は、学習指導要領の全体像を述べたものであるが、部分だけを引用して、旭川学テ最高裁判決と教育基本法10条との論理的関係はほとんどなにも言ってきていない。我々は次回の準備書面で批判し追及することになるであろう。 求釈明第2点の「市教委側は、根津さんのプリントの内容が学習指導要領に逸脱し不適切であると言っているが、プリントの内容に何か事実的な間違いがあるのか」というものであったが、それについては、根津さんが『「指示」「指導」「命令」の関係をマインドコントロールととらえる事実誤認をおかしている』と1行書き、それを立証するためにわざわざ、「指導」とは広辞苑にこう書いてあるとして、広辞苑の「指導」のページをコピーしたものを乙6号証という証拠として出してきた。何ら内容的な反論にはなっていない。
こちらの主張は4つあり、今後の見通しは次のようなものである。
@教育委員会が授業内容に口出しする以前の問題として、口出しすること自体が教育基本法10条の不当支配に当たるという主張。…… … …今回、被告側は、これに対して、ほんの1,2ページだけの反論である。今後どうなるか
Aそもそも根津さんの授業は学習指導要領に逸脱しているかどうか。学習指導要領の枠とは何か? 枠があるのかという主張。 … … …ここがとりあえずの最大の争点であろう。今回、我々は、新潟大学法学部の成嶋隆教授の意見書を甲第10号証として、さらに、文部省の生涯学習振興課長が小学館の総合教育技術に載せている「学習指導要領は最低の基準であってこれにとらわれる必要はない」という一文を証拠として出した。我々自身の準備書面(2)でも「学習指導要領は最低の基準である」という主張はしたつもりだ。今後、さらに、全面的に論点を繰り広げたい。      


B仮に学習指導要領を前提したとしても、根津さんは「日の丸・君が代」を否定したわけではない。ましてや「日の丸」を破り捨てたとかいう問題ではない。考えようと問題提起しただけなのだ。その程度のことすらも学習指導要領は許さないものなのか。「考える。上から言われた事に従うだけでなく自分の主張を述べる」ということは憲法で保障されたことではないのか? 今回は、この良心の自由について、アメリカのバーネット事件連邦最高裁判決の翻訳文を証拠として出した。今日、我々は、被告側に「それほどまでに学習指導要領第4章の中の国旗・国家条項というものは絶対不可侵なものなのか、根津さんの授業のように問題提起すらも許さない絶対不可侵なものなのかどうか、明確な回答を要求する」という具体的な質問事項を出した。被告側は、どこまで踏み込んで答えてくるか。それによって議論がどう深まるかである。
C最後の主張としては、根津さんは事前にプリントを校長に見せているのだ。校長は駄目だと言っていない。だから授業をやったのに、後になって処分するとはどういうことか。
裁判官が一部変わった。廣田民生裁判官、鈴木秀行裁判官、山田直之裁判官。

傍聴者から
第2回公判を傍聴して                 秋山良一(八王子市教員)
 8月23日(木)八王子地裁で第2回根津さんの石川中裁判が行われた。久しぶりの八王子地裁で少々戸惑っていたところ運よく弁護士さんに会えたので後について行って無事たどり着くことができた。夏休み中なので傍聴の集まりが悪いのではと心配していたが、すでに大勢の支援者達が集まっていたのでほっとした。中にはTシャツに大きく日の丸・君が代の強制反対と書いて参加した人達もいたが、前回は裁判長に強く退場を命じられたそうだが、今回ははたしてどうなるのか、それも楽しみであった。
 中に入ると、傍聴席もほぼ埋まるほど大勢の人が駆けつけてくれていた。中には、海老名や横浜から2時間以上もかけてきてくれる人もいて、根津さんの裁判の輪が確実に広まっていることが実感できた。
 裁判はまだ始まったばかりなので、準備書面で双方の主張を述べるということで、あっけないものであった。せめて読ませるぐらいのことはしてもよいのではと思ったが、弁護士さんの話ではそういうものだそうだ。
 心配されたTシャツも今回はお咎めがなくて本人達はちょっと拍子抜けしたねと話していた。
 その後、裏の公園で総括集会を開いて弁護士さんから今日の裁判の意義等の説明と根津さんの多摩中での様子について報告を受けた。多摩中での根津さんへの包囲網のすごさに日本の民主主義(あったのかどうかは疑わしいが)の危うさを強く感じた。
 厳しい状況ではあるが心ある人々と協力し何としてもこの裁判に勝たなければ日本の未来はないと強く感じた日であった。

「教育が平和をつくる!」            井上 悦子(葛飾人権ネット)
7月29日にウィメンズプラザで、「Weフォーラム2001」の分科会「『日の丸・君が代』に抗するのは何のため、誰のため?」で根津さんのお話を聞きました。


 今の教育現場では、『日の丸・君が代』の押しつけをはじめとして、戦前の教育にもどっているという状況であることを知り、とても危機感を感じました。
 「子どもの権利条約」には、おとなにも適用したい内容ですが、第13条「表現の自由」では知る権利、第14条「思想・良心・宗教の自由」では権利の尊重が載っています。学校教育のなかで生徒が『日の丸・君が代』等を自由に学習したり、話し合うこともできないのは、この条約違反にあたり、子ども達の平和・人権教育上問題です。
 また、私は根津さんの裁判は、「戦争のできる国つくり」にストップをかける為に、重要な裁判だと思います。多くの方に、この裁判を知ってもらい、支援に加わるように呼びかけを広げたいと考えています。

愛しのTシャツ その2 ( M ・F )
8月23日の第3回根津裁判の前に、私は、「お眠り私の魂」というとんでもない本を読んでしまった。朔立木という元司法関係者らしい覆面作家の小説だ。事実は小説より奇なりというけれども、もしそうだったら、行政訴訟をする事自体が空しくなってしまう。これは裁判所というパンドラの箱を開けてしまったような小説なのだろうか。苦悩する裁判官,ゆがめられた人間性、先に決まっている判決、5人の不倫相手への生々しい恋文、悲劇的でおぞましい結末……。あまりのリアルさに、現実の裁判官という人たちをみる私の目は焦点ぼけしたまま、当日・台風開けの暑い日、八王子地裁に行った。
やはり「君が代・日の丸・強制反対」と書いたTシャツを着た。2枚目は40年来の友人が着た。この前の女性もにこにこして着てくれそうだったが、2枚しかない。ごめんなさい、足りなくて。裁判所側は、根津さんの弁護士を通じて「着ないように。着たら裁判を延期云々」と言ってきたのだそうだ。私は、そのことを、廊下で根津さんから聞いた。でも私たち二人は、なにも言われない。並み居る職員の方々は見ているだけだった。何か言ってくだされば、私たちには、質問と要請があったのに……。 三権分立の民主主義国家においては、司法の独立は尊重されなければならない。そのためには、法廷の権威が尊重され、法廷の秩序が保たれなければならない。しかしながら、私たちが、「君が代・日の丸・強制反対」と書いたTシャツを着る自由も尊重されなければならない。
 開廷……略……閉廷。
 結果として、法廷の権威は保たれ、私たちの自由も保障された。このような判断を下してくださった廣田民生裁判長、鈴木秀行裁判官、山田直之裁判官に心から敬意を表します。
私は、「お眠り私の魂」というフィクションの中の裁判所の世界を忘れよう。忘れられるものならば……。そして、ひたすら、正義のために日夜闘っている裁判官の方々がいるということだけを信じよう。


さて、裁判の内容は……、なんにもわかりませんでした。わかったのは、この次の公判が、11月8日午前11時からということだけです。裁判の後、和久田弁護士と萱野弁護士に解説していただいてやっとわかりました。そして、新潟大学の成嶋隆教授が、非常に内容のある”意見書”を提出して下さったことも聞きました。この傍聴記を書く前に、そのコピーを読ませてもらった。うーん、すごい。私なぞ、憲法を守れだの、教育基本法を守れだのと言っていたけれども、随分、憲法や教育基本法の精神を忘れていた。ほっぺたをひっぱたかれた気がした。
成嶋隆教授の意見書「教師の教育活動と教育行政」の検討
支える会法律担当 * * * *
 根津さんは、憲法学者で教育権が専門の新潟大学教授成嶋隆氏の意見書を裁判所に提出しました。ポイントをいくつか整理します。
 まず、日本国憲法、および準憲法としての性格を有する教育基本法の趣旨からすると、平和で自由で民主的な社会が成立するためには教育の力が重要であり、そのためには、教師の教育活動の自由が必要であるということです。それを保障するのが「教育は、不当な支配に服すること」がないと規定した教育基本法10条です。教基法10条は戦前の天皇制国家権力による統制の反省から、教育行政が教員の自由な教育実践に介入することを禁止する条文です。また「教諭は‥教育をつかさどる」と規定する学校教育法28条も、同様の目的を有しています。このような解釈に基づき、校長が教員の具体的教育活動に対し、職務命令を発することは、憲法およびこれらの法律に照らし違法であると考えられるのです。
 次に、学習指導要領の法的拘束力の問題です。学習指導要領とは、憲法26条から発して、教基法→学校教育法→学校教育法施行規則という「法令規定の連鎖」によって、文部科学大臣によって発せられる告示です。成嶋教授は、教育という活動が私的な領域から発したものであることに注目し、教育の内容・方法という内的事項については、市民社会の領域に留保されているので法律による関与は許されない、と主張します。したがって、もし学習指導要領のような法令が存在するとしても、それは、教育課程の「外枠」にあたる部分に限られ、内容も「大綱的」なものでなければならないのです。このような解釈からすると、現行学習指導要領には法的拘束力はなく、それに「違反」したとしても、法的制裁の理由とはならないどころか、今回の根津さんの授業は現行指導要領の「大綱的基準」の範囲内であることは明白であり、八王子市教委の処分は違法なのです。


 最後に国旗国歌法と学習指導要領に基づく、学校における強制問題が検討されています。憲法19条からすれば、公教育といえども国家が特定の世界観を子どもに植えつけることは、子どもの良心形成の自由を侵害するという早稲田大学教授西原博史氏の説を引用して、学校での君が代・日の丸の事実上の強制は憲法上許されないと指摘します。(この論点は西原氏の意見書が執筆されたとき詳しく説明します。)
 成嶋教授は、「自分の頭で考え判断し行動する」姿勢を養おうとする根津さんの実践は、教基法→学校教育法→学習指導要領という法的な連鎖に照らしても許容されるべきこと、また、教育改革論議にさえ同じ目的が主張されていることを指摘し、意見書を閉じています。このような綿密な憲法論に対して、市教委側がどのように応答してくるのか、みどころだと思います。裁判のこれからの進展にご期待下さい。
 
石川中裁判を支える会・育てる会合宿の報告    (文責 T)
8月1日の午後から2日の午前中まで、神奈川県の根津さんの実家で11人が参加して合宿。
4月から多摩中問題で度々会議を持ち、その合間を縫って石川中の裁判闘争を討議するという状況で7月まで来ました。ゆっくり時間をとって、この間の多摩中問題を整理し方針を出すことと、石川中裁判闘争の総括と方針を討論することが今回の合宿のメインテーマでした。
多摩中問題
4月からの7月までの根津さんの市教委による事情聴取、多摩教組のビラ入れ、根津さんの出席が許可されないまま、緊急保護者会(2クラス)が開かれた等の事実経過が話されました。
○ 事情聴取に関しては、未だ中断したままです。
○ 緊急保護者会では「3年3学期の『慰安婦や同性愛』の授業はするな」「授業を校長、教頭先生、教育委員会が参観し指導を」という要求が出された。また、5項目の質問、要望書が出され文書で回答せよと言うことであったが、直接保護者で回答したいと答えたが、出席を許されなかった。
○ 校長は学期末までに9件の「職務命令」書を出してきたが、年間指導計画を提出しろ等の職務命令であった。職権の乱用としか思えない。
○ 多摩教組で校長、市教委宛に「抗議葉書」を出す。
 ○市教委に対してやり残してきたこと  ・根津さんは事情聴取を拒否していないこと・どういう事情で中断されたのか質すこと・市教委への質問事項に答えて欲しいことを再度会って、答弁して貰うことを確認。
  根津さん不在の保護者会、問題があれば当該の教師と保護者が直接話し合い、解決していくのが筋だと思うのだが。校長、市教委は姑息な手段を使ってでも根津さんに「不適格教師」の烙印を押したいと言う意図がこの間の動きで見え隠れしている。私達も使える権利とあらゆる手だてを駆使して、攻撃に晒されている根津さんを、支えていかねばと思った。 

石川中裁判 第1回、2回の公判の経過と第3回の公判に向けて裁判をどう闘っていくの
かについて話し合った。第2回の公判で裁判長は原告と被告の主張には事実関係に関して
は「ほぼ争いがない」ので「立証計画をだせ」とコメントしてきたが、民事訴訟に矮小化
させないために第3回の準備書面の内容を完璧なものにする必要がある。
裁判の場にすべての論点をさらけだすこと、引っ張り出すことが必要ではないかと…
☆支える会として、今後、弁護士を増員することや弁護団会議の回数を増やすことが提案された。
「自分で考え、判断し、行動できる人間を育てる」という教育は、今を生きる子どもに一番必要とされる内容だと考える。「教育内容」に関わる処分の裁判の結果は今後の教育活動に多大な影響力を持つことになるだろう。裁判を短期間に終わらせないためにも、支援の輪を広げ、多くの人に裁判の「意義」を知って貰うことの必要性を痛感した。
暑い夏の夜だったが、議論も熱いものだった。


会報の名「ほうせんか」の謂れ 朝鮮歌曲「鳳仙花」による。3・1独立運動の翌年、東京音楽学校を中退して帰国していたバイオリニストの洪蘭坡(永厚)のつくった曲に、朝鮮洋楽界の金亨俊が詩をつけた。1920年作。秋に枯れゆく鳳仙花に踏みにじられた祖国の姿を、種子が飛び散り春風によみがえる花に祖国独立の希望を託しています。今も人々に歌い継がれ愛されています
(以上解説 サラム 音楽編「みんなで歌おう」より)


鳳仙花 (加藤登紀子アルバムより歌詞)
赤いほうせん花 お庭に咲いたよ
 灼けつく夏の日 暑さも知らずに
 かわいい娘は 爪先染めたよ

赤いほうせん花 お庭に咲いたよ
 やがて夏去り 秋風吹けば
 ほうせん花種蒔け 遠くへはじけよ

(下は21年前の光州闘争の頃、耳にした詞)
北風吹き抜け 垣根も凍るよ
やがて芽を吹く 春まで待てよと


次回公判のお知らせ
11月8日(木)午前11時から
八王子地裁401法廷(JR駅から徒歩8分)

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