2002.1.14号

“指導力不足教員”のデッチ上げは不可解な「一通の手紙」から始まった

「根津さん処分をとめよう」1・12緊急集会報告

 「根津さん処分をとめよう」1・12緊急集会が、2002年1月12日(土)PM2時より やまばとホール(市役所隣旧多摩市関戸公民館)にて開催された。主催 教育の自由を考える市民集会実行委員会/「日の丸・君が代」強制に反対するシンポジウム実行委員会/考え、判断する子どもたちを育てる学校教育を!市民の会/石川中裁判を支える会/校長のデッチ上げを許さない教員の会/多摩島嶼地区教職員組合。

 小春日和の天気に恵まれ、北は北海道から南は兵庫まで200数十名が参加し、賛同人は243名1/9現在)に達した。集会は3時間半に及ぶ密度の濃い内容。その一部をご報告します。(内容要約、順不同)

@ 小森陽一さんのお話

多摩市の教育に本来の自由と民主主義を

−根津先生に対する攻撃を市民自身がはねかえすために−

戦後教育は右派保守勢力の全体的攻撃の突破口として位置づけられる。「つくる会」教科書採択問題ではギリギリの所で反対運動が阻止したが、「つくる会」はリベンジとして教育基本法を攻撃した。小渕、森元首相らが改悪の準備をした。中曽根元首相は「教育改革をめざすもの」を産経新聞に載せている。憲法と基本法は不可分に結びついているとし、憲法改悪の布石として憲法と基本法を分断し、一気に憲法改悪をしようとしている。教育基本法改悪は最終的な下準備といえる。改悪の内容では、国際貢献・国際協力を日本人の心の支えとするとし、「平和と個人」を抜き去ろうとした。教育基本法の理念を骨抜きにしようとする、遠山文部科学大臣の意図的消去法である。

「一部のエリート集団をつくるため、遺伝子チェックをすれば良いのだ」という三浦朱門氏の発言にみられるように、お金がありエリート集団になるグループと、その他の愚民となるグループとの差別、固定化の教育が「ゆとり教育」という名のもとに進められている。予算配分でも東京都教育委員会は、進学校といわれる上部学校長の給与に下部学校長の給与をカットしてまわす、ということを考えている。差別を固定化しグローバリズムに勝ち抜ける生徒にのみお金を使おうとしている。ゆとり教育は国民をごまかすための看板である。

ボランティアを義務付けるのは社会、国家に仕える人間をつくるためである。総合学習で自衛隊見学を実施する学校が、全国で600校以上にのぼる。

指導力不足等教員が公けに認められたことで学校は「ものを考えなくする場」になった。子どもが自分で考え、少数者であってもものを言い、ものを考える、そうした生徒たちを支える先生が攻撃のターゲットになった。根津さんはこうした攻撃の先鋒にあげられた。

細川内閣のアジアへの謝罪と、1995年の村山内閣で政権から降りた政党を経験した自民党は、1990年元軍隊慰安婦の証言で正当化できない事実が歴史教科書に書かれ、政治的アイデンティティーが崩れてしまい危機感をもった。そうしたことへの攻撃の選択として石原都政がある。「日の丸・君が代」強制のように上位下達、民主主義を否定する学校をつくろうとしている。人事考課制度導入は校長のマネージメント方針に対し忠誠を尽くす教師集団をつくることが目的だ。学校を民主主義に絶望する場にする。あきらめ、立ち上がる勇気を子ども、親、教員から失わせる。対抗する組合は残念ながら文部科学省よりになっている。攻撃を受けている教員を切り離し、個別攻撃させようとしている。そして子どもを人質に取られている親たちがいる。

ポツダム宣言後、日本の民主主義の発信基地は学校だった。56年経った今、民主主義は地域、家庭、職場に根づいているが、学び舎は民主主義に絶望する場に変わってしまった。

学校再生の道は、衆目の場で対抗提案を積極的にすることだ。市民による介入で、情報公開をする開かれた学校にする運動を組織化することが急がれる。市民が学校に行くことを断る権利は校長にない。市民としてどういう教育(すべての教科書チェックなど)どういう学校にしていくかを絶えずチェックしていくことが大切である。

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☆ 小森さんへのQ&A

Q)・学校への市民介入の具体案について教えてほしい。

A)具体策といっても特効的なものはない。地域で教育に関心を持ち議論する日常的な関係性がつくられているかが大事。

・ その他・教育委員の公選制について・主任制度について などの質問が上がった。

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A 根津さんの話

都教委にて審議中なので事実報告を述べた。(亀子新聞、ほうせんかバックナンバー参照)

B 萱野弁護士のお話

法的代理人(法定は誤りだそうです)の萱野弁護士から経過報告とまとめ

・「指導力不足等教員」を申請したこと自体、校長の職権乱用である。(文科省、国の意図を体現)

・理由のもろもろの事実に関し、都研送りになる事実は一つもない。

3月人事異動の時が注意。根津さんを決して学校現場から追い出してはいけない。

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C 質問コーナー「根津先生、質問があるのですが」(実行委員 高梨さんとの対談形式)

Q)なぜ家庭科で性差別、軍隊慰安婦、同性愛のことを教えるのですか?

A)以前の家庭科は男女別々であったため性差別を助長する面があった。男女共修家庭科になってから共に学ぶようになった。性差別を取り上げることは男女で家庭科を学ぶ家庭科の今日的な役割だと思う。

軍隊慰安婦の授業は、家庭科の授業の中の僅か2時間。これは女性差別の最たるもので過去から現在につながる問題。現在生まれている人の問題として捉えてほしいと思っている。同性愛については子ども達が卑猥な言葉を使っていることが気になり、考えて欲しいと事実を提示した。現実を見ての授業だと思う。

Q)イデオロギーの押し付けはないですか?

A)子ども達に事実を提示している。イデオロギーの押し付けではない。むしろ日の丸・君が代の強制のようにイデオロギーの押し付けをしているのは権力側だ。いろいろな 事例を紹介し、子ども達が考えていくことを保証することが大切。 などなど

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D シンポジュウム 「なぜ、根津問題に関わるのか」 (発言順)

国立から 遠藤 良子さん
多摩島嶼地区教職員組合 長谷川 康之さん
石川中裁判を支える会 古荘 斗糸子さん

教育の自由を考える市民集会実行委員 小山 七積さん  
デッチ上げを許さない教員の会 入江 冨美子さん

・ 支援5団体の代表が、それぞれの場所での取り組みと状況を報告し、根津さんに起こっていることを点から線へそして立体へと広げてみせた。参加者に更なるネットワーク作りと支援の呼びかけをした。特に多摩の小山さんから、官僚指導で市議が動き学校が動き保護者が動員されるという多摩の構図の指摘があった。先の子ども市議会の様子が映像として多摩TVで繰り返し放映されたことは人権問題である。

司会 * * さん(実行委員)

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E 会場から

川田 龍平さん)前からメールはいただいていた。もっと早くから行動を起こせばよかったと思っています。今日26歳の誕生日です。教育に関して大学で学んでいて、6月には教育実習をします。会場にこれだけの人が集まっているのは、すごい力になると思います。若い人が自分の問題として考えていけるのは重大なことなので、龍平学校を地域につくっています。問題を見届け、伝え、多くの人々と共有していきたい。身近な人例えば買い物をしながら地域の人に声をかけていく。これからも自分で出来ることは協力していきたい。

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F 緊急集会アピール

「根津さんの“指導力不足”を認めることは日本の教育の良心を圧殺することです」アピール文を読み上げ、全員一致で採択した。都教委、市教委に提出する。

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総合司会 福島さん 上村さん(1・12集会実行委員)

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☆眠れるエリートより目覚めた愚民に亀子はなりたい。川田龍平さんのことだまには希望が宿る。参加者、実行委員のエネルギーがあふれる集会でした。さらに広くさらに大きく根津さん支援の輪を広げましょう! (亀子)

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