国旗・国歌の強制懸念、教科書に記述認めず



 02年度版の教科書検定に合格した中学公民教科書の検定で、国旗・国歌法について、学校行事への強制を懸念する声があることを掲載しようとした出版社に対して、文部科学省が「法律は強制力のあるもので、(記述は)おかしい」などと指摘し、最終的に記述が削られていたことがわかった。

 日本書籍が検定申請した中学公民教科書で、申請時の教科書では、欄外に99年に国旗・国歌法が制定されたことを記述。続けて、「この法律は、思想・良心の自由に反するという意見もある」と説明していた。

 文部科学省はこの記述に、「程度が高すぎる」などとする検定意見を付けた。このため、同社は「この法律が学校行事などに強制されることをあやぶむ声もある」と差し替える案を提示。同省は「一般に法律は強制力を持つものであり、法律の強制をあやぶむという文章はおかしい」と指摘した。

 同社は、国旗・国歌法案の成立直前、当時の野中広務官房長官が学校現場への影響について、「生徒や児童の内心に入ってまで強要するものではない」と発言したことなどを盛り込む案も示した。だが、同省は「なお程度が高く、検定意見をクリアしていない」と指摘し、同社は最終的に記述を削除した。

 同社編集幹部は「文部科学省の指摘は、批判的な記述は認めないという意味だと判断し、あきらめた。長い議論の歴史を背景にさまざまな考え方がある問題で、書けなかったのは残念だ」と話す。


 同省教科書課は「法の強制力は一般論として言った。君が代を歌うことなどを強制するという意味ではない」としている。(06:02)

2001年4月5日朝日新聞




「日の丸、君が代を尊重」と検定意見相次ぐ




 国旗・国歌については、九九年に法制化されたのを受け、その事実や「尊重する態度」、君が代の意味を盛り込むよう求める検定意見が相次いだ。

 小学社会(三〜六年)では、五社合わせて十六か所ある国旗・国歌の記述中十二か所に「配慮が足りない」などの意見が付され、修正された。三、四年では「大切にされている」との記述で認められたが、五年では「大切にあつかわれています」などの表記に不十分と意見が付いた。新要領で、五年に「尊重する態度を育てるよう配慮する」ことが新たに加わったためで、「大切にあつかわなければなりません」など「主体的態度を育成する方向」(教科書課)に修正された。

 「君が代」については「意味の記述が不十分」との指摘が複数あり、ほぼ横並びで「国の末永い繁栄や平和を願っています」との表現が追加された。

 中学公民でも、八社中五社に検定意見がついた。このうち、法制化を記述していないという指摘が二社、記述していても「尊重する態度を育てる配慮がない」との指摘が二社にあった。さらに一社は、法制化について「思想・良心の自由に反するという意見もある」と記述していたが、「憲法の条文解釈に踏み込む必要があり、程度が高すぎる」と指摘され、削除した。

(4月3日22:25)


2001年4月5日読売新聞





「つくる会」の教科書に米ユダヤ人系団体が懸念表明



 「新しい歴史教科書をつくる会」主導で作られた教科書が検定で合格したことについて、米国のユダヤ系人権擁護団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは3日、「第2次世界大戦中の日本の侵略を十分に扱っていない教科書を日本の文部科学省が認可したことに深く心を痛める」との声明を発表した。

 エイブラハム・クーパー副所長は朝日新聞に対し「近隣諸国の間での日本に対する信望に打撃となる。米国でも同様だ」と述べ、「真の歴史に近づこうと闘っている日本人が大勢いることも知っている。重要なことは、過去を隠そうとするのではなく、明らかにすることだ」と強調した。

 カリフォルニア州では一昨年、第2次大戦中の強制労働の責任を問う州法条項が成立。日本企業を相手取った訴訟が相次いでいる。同センターも戦時下の加害行為の解明をめざすため米議会に資料開示の働きかけを強めている。


(23:11)

2001年4月5日朝日新聞

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