一太郎文書
平成22年(ネ)第4632号
準備書面1
2010年10月12日
東京高等裁判所 第4民事部御中
控訴人 田 中 哲 朗
〒193−0942 東京都八王子市椚田町1214番地1ー707
電話 042-664-5602
被控訴人 篠塚勝正
被控訴人沖 電 気 工 業 株 式 会 社
105-0003東京都港区西新橋3-16-11(電話: 03-5403-1211 大代表)
代表者 代表取締役 川崎 秀一
一 被控訴人の「控訴答弁書」に対する反論。
1「1退場の適法性について」はまったく説得力のないものと言わざるを得ない。
この答弁書においても被控訴人の行った回答は
「福岡高等裁判所にて審理中であった本件工事に関する訴訟において、平成20年6月19日、由布市が被控訴人会社に対して1278万5714円の損害賠償をせよとの判決が言い渡され、由布市と協議の上今後の手続きを検討して参りたい旨回答がなされていた」
としているだけであり、控訴趣意書ですでに指摘したように、この「回答」では株主にはいったいどんな「訴訟」なのか全く理解出来ないのである。談合という言葉が一度たりとも使われていないのであるから、株主はまさか談合という犯罪行為を行ったなどとは思わず、工事をめぐる契約上のトラブルであろうか、とぐらいしか考えられないのである。株主は被控訴人が談合という犯罪行為を行った事を知れば、これからも株主であり続けることを止めるものすらありうるであろう。
そのような重大な事実に一切言及していないこの回答は全くその責任を果たしていないものであり、それに対し答弁を求めることは株主の法的権利であり、それを無視して暴力を用いて回答を求める株主を退場させることは
「議長の議事運営権の行使が著しく不当であってこれを濫用した」
場合に他ならないことは論を待たない。
2「2退場行為の適法性」について
被控訴人の主張は。原審が行った不当な判断に対する控訴人の批判を裏付けるものである。
原審はあたかも控訴人が怪我をしたという主張がでっち上げかのような判断をしていたが、被控訴人は控訴人が主張した事実関係は基本的に認めている。
しかし「暴力に至らない範囲で」などと何の根拠もなく主張しているが、固定された椅子の肘掛けにしがみついた控訴人を力尽くで引きはがしたことを認めているのである。そのようなことをすれば引きはがされた者が怪我をしないほうが不自然であることもすで主張した。これが未必の故意よる暴力行為を行ったことになることは既に主張した。
3「3その他」について。
控訴人が控訴理由書で主張している内容の反論になっていない。
二 被控訴人の違法行為
1 被控訴人が談合という違法行為を行ったことは既に立証した。今年6月29日に行われた被控訴人株主総会において、川崎秀一社長は
「遺憾ながら当社の主張は認められず由布市に損害賠償請求には応じましたが、沖に置いて談合の風土は一切無いものと認識しております。」
と述べた。すなわち未だにその事実を認めず反省していないのである。裁判所はこのことをふまえなければならない。
2 思想信条による差別、人権侵害
(1)以下は2004年12月に被控訴人が控訴人を相手として起こした仮処分裁判の中で控訴人が2005年1月25日付け準備書面で主張した内容である。転用する。債権者は被控訴人、債務者は控訴人である。
(1)債権者は、1978年の指名解雇以降、上記争議団を支援する者、あるいは、争議団の配布するビラを受け取り続けているという理由で会社に抵抗している者と見なされた者、就業時間前のラジオ体操(就業時間前であるから債権者に法的拘束力はないので建前は自由参加)に参加しないと言う理由で会社に抵抗していると見なされた者に対して
@ 仕事の取り上げ。
A 賃金差別
B 昇進昇級のストップ
C 職場の親睦会などからの排除
D 口を利かせない、挨拶をしても返事をさせないなど職場での孤立化
などの差別、いじめを行い、また、し向けた。
(2)これらの状況は現在も継続しており、以下に示す、法的な申立においても、債権者は一切その責任を認めず、反省の態度を示していない。従って、その被害は現在も継続して発生し続けている。
(3)近年、経済界でも、思想信条に対する差別が企業内に存在することの反社会性、反効率性を認識し、それを改める動きがあり、債権者もそれに乗じて2001年に発行した「沖電気行動規範(乙第20号証、2頁 2,4)において、「思想信条による差別をしない」と謳っているが、これまで行ってきたことの事実を一切認めず反省すらしていないのであるから、残念ながらそれが本心でないことは疑いがない。
(4) 債権者が行ってきた差別の実状は、債務者の地位保全裁判の中で計4人の証人、下出信夫、北野好人、新江隆、武原妙子により自らの経験として生々しく証言された。また別の5人の陳述者により陳述書により陳述された。(債権者がこれら、証言、陳述の事実を否定するならば、証言調書、陳述書を証拠として提出する)
(5)また、債務者の他にも債権者による差別に対し法的処置を講じた者が以下のように存在する。
@ 1981年 沖電気争議団代表中山森夫氏の妻洋子さん、沖電気争議を支援していた浅利さんが、仕事を取り上げられた事など差別を受けたことを理由に沖電気を東京都労働委員会に提訴した。
A 1991年 指名解雇争議の和解により職場に戻った真喜志晃(まきしあきら)さんが、仕事差別、いじめがあったとして浦和地方裁判所に仮処分の訴えを起こした。
B 1993年 指名解雇争議の和解により職場に戻った秦康博(はたやすひろ)さんがリフレッシュ休暇を与えられないなどの差別を受けたとして沖電気を東京地裁に提訴した。
C この3件の事実関係については、債権者は別訴に於ける「第2準備書面」の中で認めている。(乙第11号証 9頁 10頁)
(6)これらは、それぞれ被害者との和解などで解決し、債権者はそれらを理由にこれらの訴えが理由のないものと主張している。しかし、複数の者が債権者より人権侵害を受けたとして法的処置をこうじたという事実は揺るがないのである。とりわけAの件については浦和地方裁判所から、差別の事実を認定し、それを改めるようにとの決定が出されている。(乙第2号証の1)浦和地方裁判所はこの決定の中で債権者が真喜志さんに対し
「社内QCサークルからの排除、納涼祭、運動会、新年会、親睦会からの排除等、一切の差別的取り扱いをしてはならない。」
と命じており、債権者が真喜志さんに対し、
@ 社内QCサークル
A 納涼祭、
B 運動会、
C 新年会、
D 親睦会
からの排除を行っていたと認めているのである。
また仕事の内容についても
「他の従業員から隔離した状況で、債権者の経歴や能力を無視して、基盤図面に記載された電子部品の色塗りによる単純識別作業を強いていた。」
という「いじめ」が行われていることも認めている。
この事件は1992年に和解した。この和解の審尋調書(乙第2号証の2)によると債権者は真喜志さんに対し
@ 適切な作業指導を行うこと(すなわち、これまでは不適切な作業指導が行われていた)
A 行事やQCサークルに本人が望めば参加させること(すなわち、これまでは参加させていなかった)
B 解決金50万円を支払うこと
を命じられ、これに応じたのである。すなわち債権者が行った差別、いじめという人権侵害を行ったことを裁判所が認めたことによる命令に債権者は応じざるを得なかったのである。
(7)従業員がその雇用主である企業を相手取って法的救済を求める行動を起こすことが、どれほどリスクの高いものであるかは、心ある裁判官には敢えて説明するまでも無いことである。債務者の訴訟を含めると4件もの訴訟が債権者を相手になされたと言うことは、その陰に、被害者が法的処置を取り得無かった、遙かに多くの人権侵害が続いていることを裁判所は推測すべきである。
(8)債務者は、1987年より毎年、債権者株主総会に株主として出席し、上記した、すで起きた事実のみならず、現在起きている債権者職場の差別を具体的に指摘し、改めることを求めてきた。以下その例を示す。
@ 指名解雇争議の支援者及び和解による職場復帰者に対して賃金差別、仕事差別、昇進差別、親睦会、クラブ活動からの排除などの差別が行われている。 (ほぼ毎年指摘)
A 本庄工場において捺印作業をさせられている者が自動機械があるのに手作業をさせられている。さらに捺印後に「これは不良品だ」と言いがかりを付けてし直しさせている。
(1987年に指摘)
B 職場復帰した秦康博さんが、リフレッシュ休暇を与えられなかったとして、被告を東京地方裁判所に提訴した。 (1993年に指摘)
C 弁理士の資格試験に合格した者(HKさん)が、その資格をより完全なものにする手続きとして必要な研修を出張扱いで受けさせてもらえるよう要求したが拒否された。 堀江さんは弁理士という重要な資格を持ちながら全く仕事が与えられていない。また彼の机の上には段ボールなどが物置のように他の者によって積み上げられている。(1996年に指摘、それ以降度々指摘)(乙第9号証 2頁)
D 指名解雇争議の支援を中心的に行った米田徳治(まいたとくじ)さんは債権者会社の優秀な技術者でありながら、差別を受け、2004年、定年退職するまで(40年以上勤続)係長にすら昇級しなかった。(2004年に指摘)(乙第19号証の1 3頁)
E 債権者プロセス技術の有賀(あるが)さんは未だに仕事が全く与えられていない。(2004年に指摘)(乙第19号証の1 3頁)
F 債権者の従業員であって日本共産党に所属していることをビラの配布等で公にしている者は(Dの米田さんもその一人)この25年以上に亘って、一人として係長にすら昇進していない。(度々指摘)(乙第19号証の1 3頁)
(9)債権者は、この指摘に対し、ただの一度も具体的な答弁や反論を行なったことがない。債権者は、債務者が指摘することが事実であるから反論できないのである。(乙第1号証の1)(乙第8号証)(乙第9号証)(乙第19号証の1)
(2)このように控訴人は被控訴人株主総会においてその人権侵害について具体的な事実に基づいて指摘、質問してきた。しかし、被控訴人は「差別、いじめは存在しません」などと言うのみで、具体的内容対する回答をしたことは一度もない。甲第4号証は 上記浦和地方裁判所の決定である。
また本件株主総会において控訴人は
「3年続いているいじめの例。ある人の机の後ろを通る者がみんな咳をする。一日何十人も咳をする。本人の被害妄想かと思ったが、そうではない。他の会社でもはやっている巧妙ないじめの手口だ。」
と指摘している。これは上記(8)のC の弁理士HK氏に対して、2005年ごろから5年に亘って続けられた「モビング」と呼ばれる新たなタイプのいじめである。集団で証拠が残らないように些細ないじめを繰り返し、(この場合ターゲットの至近距離で咳や咳払い、鼻をすするなどの音を出す「ノイジング」と呼ばれる手法)本人の被害妄想と思いこませ自主退職に追い込む手口であることが近年知られていることを指摘しておく。
(3)控訴人はこれら差別の被害者の立場のみならず、株主の立場から、
これらの状況は技術者の精神に悪い影響があるので経営にとって深刻な悪影響があるから改めるべきだと指摘してきた。
当初は指名解雇争議支援者などに対する「政治的」な意味を持っていた「いじめ」が現在では中途入社者や派遣労働者などに対して行われている。その為優秀な人材が被控訴人会社を辞めてしまい、優れた人材が入ってこない悪循環が続いているのである。このことが、現在の経営悪化の最大の原因であると、控訴人は繰り返し株主総会で指摘したのである。
(4) 被控訴人の経営は悪化の一途をたどりその経営難からすでに、その主力であった八王子工場を売却し、資本金の額の減少、資本準備金額の減少にともなう臨時株主総会を開かねばならないような状況にまで陥っている。(甲5号証)
裁判所がこれまでに控訴人が行った裁判の中で指摘した内容により被控訴人をたしなめていれば、こうはならなかたと思うしだいである。
(5)このように、企業の経営に取っても重大な問題である、これら人権侵害に関する質問に、何ら具体的答弁をすることなく、回答を求める株主を物理的強制力で排除することは
「議長の議事運営権の行使が著しく不当であってこれを濫用した」
場合に他ならないことは論を待たない。
三 被控訴人の株主総会の運営
現在も、多くの企業でいわゆる「シャンシャン総会」と呼ばれる株主総会が行われている。出席者の殆どが会社から動員された株主であり、他に出席するのは少数の株を持った一般株主。過半数の議決権を持った株主が出席することはめったにないため、過半数の委任を受けた会社は形だけの総会を行う。
被控訴人もまさにこの「シャンシャン総会」を続けてきたのである。
会社は過半数の委任を受けているから少数株主の意見を無視しても影響がないと考えている。 裁判官の多くもそう考える故に、これまで、少数株主の権利を無視、軽視する姿勢をとり続けたと推認される。
しかし、株主の質問権は、少数株主であっても他の株主に提案をし、それに他の株主が同意すれば、経営者の意志とは異なることが決定されることがあり得ることを前提としたものである。そうでなければ質問権の意味がない。 その様なことはあり得ないと判断するとすれば、これは会社法の趣旨に反するものである。
控訴人が指摘している、談合、人権侵害の事実は、他の大株主がそれを知れば被控訴人に改めるよう求めたであろう事案である。しかし、被控訴人は少数株主から有益な批判や提案がなされてもそれを 他の大株主に知らせないため、改善がなされなかったのである。このような理由から少数株主の質問権は守られなければならないのである。
四 裁判所の姿勢について。
(1)控訴人は、これまで行った多くの裁判の中で上記人権侵害について指摘してきた。しかし裁判所がこの事実を受け止め対応を取ったことはない。違法行為があれば公務員はそれを指摘し、たださねばならないという法律に違反する姿勢である。ましてや裁判官という法と正義を率先して守るべき立場にあるものがこれを、すなわち深刻な人権侵害が続いていることを看過することは、許されることではない。
(2) また裁判官がこの裁判をどうせ「特異のイデオロギー」のもの、あるいは「裁判おたく」が拘っているだけだろ、と予断と偏見を持って「納得し」てはならないのである。
(3)控訴人はいつか「理不尽な判決集」と言う本が出版されるべきだと考えている。事実を無視し、一方に偏った判決の例を裁判官の実名とともに示し検証する内容の本である。
(4)控訴趣意書に続いてまことにもって裁判所を恫喝しているかのような物言い、内心恐縮している。被控訴人はこれまで裁判において21回に及んで敗訴を経験している。その一度たりとも「なるほど裁判所の言うことはもっともだ」と納得したことがない。その経験から本裁判も敗訴するであろうと覚悟の上提訴した。一縷の望みと共に、この裁判がいつか裁判所をただす資料になることを期待して。
「明確に指摘されていたのに何故その事実を、無視、軽視したのか」と批判されない判決を期待する。
以上