社内秘密組織「扇会」について
扇会は1974年に結成。全東芝の組織。
東芝府中の上野さんがその存在を知ったのは1990年ごろ。「人権裁判」の最中。東京大学社会科学研究所 山本潔教授からの論文贈呈による。扇会は2017年現在「自己啓発の会」と名を変えて存続しているとのこと。
従業員の思想チェックを行う「秘密警察」のような組織が会社の中にあることを信じられますか?
日本の多くの企業の中には「インフォーマル組織」と呼ばれる非公然な組織があると言われています。これは、従業員の思想調査を行ったり、政治的な意識を持って社会運動に関わる者がいるとそれを阻止し、従わない場合は隔離、排除しようとします。
このような企業の多くは、その労働組合が、いわゆる「御用労働組合」と呼ばれる、会社のいいなりになって行動する組合になっています。
このような状況の下では、働く人の思想信条の自由、良心の自由は企業によって脅かされることになります。
ここに示しますのは東芝に存在する「扇会」と呼ばれる非公然組織の例です。
以下、東芝府中人権裁判ニュース「じんじん」30号より
1974年4月に結成された「扇会」は「我々の基本理念と活動の原則」「実践」という文書を作成、会員に配布しました。
この中の、「明るい職場づくりの実践活動」の章の「問題者への対応」という項には以下のようなことが記されています。
一、問題者の「兆候と判断のポイント」として
1 職場での兆候判断のポイント
・職場では、行動に空白部分が多く昼休み時、終業後の行動が見当つかない。
・職場の問題、政治、社会、経済問題への関心と取り組みが強い。
・昼休み、その他の時間を直接関係のない人との交際や、人間関係作りなどに活用するようになる
・自主的な傾向が強くなり、職制に対する協調性が弱くなる。
・職場の同僚や、特に若年層と新入社員の悩み事や苦情に対する世話役活動を積極的に行う。
・若い人を対象とした「サークル活動」に非常に力を入れ、いろいろなインフォーマルグループを作り 、その中心となって面倒をよくみる。
・就業規則等をよく知り、有給休暇、生理休暇の全面公使など、権利意識が強くなる。
2 組合活動での兆候判断のポイント
・組合の集会、行事には熱心に参加し、皆の嫌がる世話役活動を買ってでる。
・職場で解決できる問題でも、できるだけ、組合に持ち込み会社と組合との問題にすることに力を入 れる。
・入社して一、二年だが職場集会、その他でよく発言する。
・組合役員になることに力をいれる。
3 寮の中での兆候判断のポイント
・特定日の帰寮時間がおくれる。
・自治会の役員に従来の慣行と違った形で、予想もしなかった人が立候補する。
・食事の内容をはじめととして、待遇改善の要求が細かくうるさく出される。
・寮の自治を強く主張し、帰寮時間その他の改善要求が出てくる。
・外部からの手紙、電話等での連絡が多くなる。
4 選挙時の動向による兆候判断のポイント。
・選挙には、駅頭でのビラ配布、社宅や一般家庭へのビラ配布など、かなり活発な活動が見られる
・選挙中、職場にビラをこっそり持ち込んでくる。
・選挙中は残業せず、休日にかけて三、四日は必ずといってよい程、休む。
・組合が、支持政党を機関決定し、その後援会に入るよう呼びかけても協力はしない。
二、これら「問題者」に対して「扇会」会員が取っている対応の例が以下。
・「Bは22歳、独身、性格もおとなしく、仕事も熱心である。職場での不満もないようだが、各週木 曜になると仕事に関係なく私用があるとの事で残業に協力してくれない。理由を聞いても話さず、 尾行してみるが網にはかからない現状である。」
・「部長より、君の組のK君が共産党の学習会に参加しているとの情報がもたらされた。・・・・私は 君は共産党の学習会に参加したことがあるようだが、と直接切り出した。K君はAからさそわれ 一度だけ参加したが再度参加したことはなかったという。その言葉を信じ、私は安心感と共に、 単刀直入に聞いたことがよかったと思った。」