小学生のみなさんへ(1982年ごろ沖電気に隣接する小学校の生徒に配布。原文はルビ付き)

 私はみなさんが学校へ行く時、いつも沖電気の門の前に立って大きな声でお祈りしているおじさんです。みなさんは、「変なおじさんだなあ、なぜあんな事をしているんだろう」と思っているでしょうね。みなさんには少しむつかしいかもしれないけどきっと分かってくれると思うので、この手紙で説明します。それでは一つたとえ話をします。

 みなさんの学校にすごく強くて頭もいいいじめっ子がいて、「みんなおれのけらいになれ。」といったとします。けらいになるといじめられないのですが、けらいにならない人を自分のけらいにいじめさせるのです。みんなはいじめられるのがこわくて、ほとんどの人がけらいになったとします。けらいにならない人は、みんなに仲間はずれされたりいじめられたりするようになったとします。

 さあ、あなたならどうしますか?けらいになりますか?けらいになった時、いままで仲好しだったあなたの友達をいじめて来いとそのいじめっ子に命令されたらどうしますか?自分がいじめられたくないから、いままで仲好しだったあなたの友達をいじめますか?

 こんな事はとてもいやなことですね。良くないことですね。でもみんながその子のけらいになったとき自分だけならないのはとても勇気のいる事です。その子に「そんな事はよくない事だからやめようよ」と言うのはもっと勇気のいることです。

 でもこれはとても大切な事です。いじめっ子がいくら強くても、こわくても、悪いことは悪いと考えて、口に出して言うことはとても大切なことなのです。

 一九七八年のことです。沖電気のえらい人達は、会社で働いていた人の中から、千人以上の人をやめさせてしまいました。人が多すぎて会社がもうからないというのがその理由です。でも、会社をやめさせられた人達は働く所がなくなり、お金がもらえなくなり、生活が出来なくなってしまいます。だからこんな事はむやみにやってはいけないと法律できめられています。

 会社のみんなは、何も悪いことをしていない自分の友達がやめさせられたのを見て、やめさせたのはよくないと言って反対しました。すると会社のえらい人達は、反対する人を一人一人呼びだして「会社にいられなくするぞ」とおどかしました。みんなはこわくなって、だんだん反対しなくなりました。

 みなさんは、沖電気の門の所で、会社をやめさせられた人達が、ゼッケンやわんしょうをつけてビラを配っているのを見たことがあると思います。「私達をやめさせたのはまちがっている。もとのように会社で働かせてください。」とビラはうったえています。

 最初はみんなビラをもらって読んでいました。やめさせられた人達に「会社にもどってこられるようにがんばれ」と応援しました。ところが会社のえらい人はあのビラを受け取ってはいけないと命令しました。みんなはえらい人が恐いので、だんだんビラを受け取らなくなりました。それでも受け取る人を守衛(みんながいつもあいさつして通る制服を着たおじさんのこと)に見はらせて報告させました。

 えらい人はビラを受け取った人を呼びだして、「言うことをきかないとひどいぞ!」とおどかしました。そして給料をへらしたり、仲間はずれにさせたりしました。会社の中で仲間はずれにされるのはとてもおそろしいことなのです。だかれ守衛の見張っている門のところでビラを受け取れる人はほとんどいなくなりました。それでもビラを受け取る勇気のある人達は、今でもみんな会社の中でひどい仲間はずれにされています。

 私はこんなことはよくないことだと考えて会社のえらい人達に「こんなことはやめなさい。あなた達のやっているのは弱い者いじめではないか。」と言い続けました。するとえらい人達は「なまいきなやつだ。ほかの者がまねしないようみせしめにしてやろう。」と考えて私を遠くの会社に転勤させようとしました。「言うことをきかないと会社をやめさせるぞ」とおどかしました。それでも私は、「あなた達のやっている事はまちがっている」と言い続けました。そしてとうとう会社をやめさせられてしまったのです。

 私は会社のえらい人達を裁判所にうったえて裁判をしています。そして沖電気でおきたような事が日本中でおきたら大変だと考えてあちこちに知らせて歩いています。朝は、会社の門の前にたって大きな声でお祈りしています。えらい人がこわくて、弱い者いじめをゆるしてしまっている会社のみんなに、「勇気を出して悪いことは悪いことだと言いなさい。弱い者いじめをやめさせなさい。」とはげましているのです。

 みんなが強い者のいいなりになってしまう世の中のことを、ファシズムといいます。みなさんがこれから大きくなっていく中で、沖電気とよく似たことに出会うかもしれません。そんなとき、「強い者にさからうと損だよ、言うとおりにしていよう。」と言う人がかならずいます。でもみんながそんな考えだと世の中が悪くなってしまいます。

 
 あなたが、そしてみなさんが、「悪いことは悪い」とどんなときでも言う勇気を持てば、みんなが幸せに生きていける世の中を守ることが出来ます。