利別小学校のライブで使った原稿。

カッコ内は子どものリアクションと注釈

こんにちわ

(こんにちわ)

おじさんは田中哲朗と言います。東京から来ました。仕事はギターの先生です。

(おじさん目、どうしたの)

病気で片一方見えなくなったけど、こっちがよく見えるから大丈夫なんだよ。

(おじさん何歳?)

54才。

(おー)


今日はこの町の先生や平和のことを考えている人達に招かれてきました。
日本中の平和のことを考えている人に招かれて、うたったり、お話をしています。

みんなの周りにあるいじめをやめさせよう。差別をやめさせよう。そうすれば悲しい思いをする人がへって、みんなが仲良くできるよい世の中になりますよ。というお話をしています。

「ラグリマ」という曲を弾きます。スペインの言葉で、涙という意味です。
涙はどんなときに出ますか。

(泣いたときでる)(嬉しいときも出る)


そうだね。うれしいときも、だれかがとても優しかったりして感激したときも出ますね。


悲しいときに出る涙ではなくて、うれしいときに出る涙がみんなの中でふえるようにこの曲を弾きます。

(演奏する)

皆さんにおみやげがあります。
この風船にはおじさんの事が書かれています。皆さんがまだ習っていない漢字が使われています。
 差別やいじめをやめさせる勇気をもとうと書かれています。

(差別ってなーに?)

それをいまから説明します。


いじめをやめさせる勇気をもとうという意味は分かりますね。


皆さんいじめを見たことがありますか。ケンカもよくないけど、けんかといじめは違いますね。
 けんかは相手がわがままだと思ったときにおこってするものです。しないほうがいいけど怒ることはあります。たたいたり蹴ったりしてはいけないけど、あいてがずるいときは言葉で怒ることはしなければいけないことだってあります。

 大勢で一人の人を長い間いやなめにあわせることがいじめです。相手が弱いときにします。弱いから自分に仕返しをしないときにする。とてもずるくて悪いことです。いじめられた人はとても悲しいし、辛いし苦しい、がまんできなくて自分で死んでしまう人もいます。

 差別というのはいじめとにています。
自分たちと違う、と思う人に、仲間はずれにしたり、嫌なことをすることです。


あの人は隣の町から来たから自分たちとは違う。あの人の背が低いから。みんなよりびんぼうだから。お父さんがいないから。お母さんがいないから。車いすに乗っている人だから。外国人だから。

だから仲間にいれてあげないとか、何かをさせてあげないとか、何かを無理矢理させるとか。


髪の毛の色が金色だから。目の色が青いから。色が黒いから。

(えー、そんな人いるの)(外国の人だとかいるよね)


言葉が変だから。みんなよりのろまだから。
大人の場合はおがんでいる神様がちがうということで差別して、殺し合いや戦争になることもあります。

(えーほんと。すごい)

 

 人間は一人一人みんな違います。双子だってよく見ると違います。違うけれど仲良くできます。でも人間には仲良くしようという心と、人を差別しようという心が両方あります。差別したい心は人に悲しい思いをさせてしまいますから出ないようにしなければいけません。自分が差別されたら悲しいでしょう。


雨だれ」という曲を弾きます。雨のしずくがぽたぽた落ちる音の曲です。みんな雨すきですか。

(農業は雨降らないとこまるんだよ)

そうだよね。雨降ると遊べなくて嫌だと思うことがあるよね。でも、だれかにはつまらないものに見えても、それが他の人にはとても大事なことの場合があります。

(演奏する)


 すこしおじさんの話をします。

 おじさんは東京にある大きな会社の前で毎朝歌を歌っている人です。じつはその会社をくびになった人です。なぜそんなことをするんだろう。変な人だと思うでしょう。

 みなさんには少しむつかしいかもしれないけど、吉田先生がきっと分かってくれると言ったので説明します。

それでは一つたとえ話をします。

 みなさんの学校にすごく強くて頭もいいいじめっ子がいて、「みんなおれのけらいになれ。」といったとします。けらいになるといじめられないのですが、けらいにならない人を自分のけらいにいじめさせるのです。みんなはいじめられるのがこわくて、ほとんどの人がけらいになったとします。けらいにならない人は、みんなに仲間はずれされたりいじめられたりするようになったとします。

 さあ、あなたならどうしますか?けらいになりますか?けらいになった時、いままで仲好しだったあなたの友達をいじめて来いとそのいじめっ子に命令されたらどうしますか?自分がいじめられたくないから、いままで仲好しだったあなたの友達をいじめますか?

 こんな事はとてもいやなことですね。良くないことですね。でもみんながその子のけらいになったとき自分だけならないのはとても勇気のいる事です。その子に「そんな事はよくない事だからやめようよ」と言うのはもっと勇気のいることです。

 でもこれはとても大切な事です。いじめっ子がいくら強くても、こわくても、悪いことは悪いと考えて、口に出して言うことはとても大切なことなのです。

 25年も前のことです。皆さんのお父さんやお母さんが子どもだった頃、おじさんが働いていた会社のえらい人達は、会社で働いていた人の中から、千人以上の人をやめさせてしまいました。人が多すぎて会社がもうからないというのがその理由です。でも、会社をやめさせられた人達は働く所がなくなり、お金がもらえなくなり、生活が出来なくなってしまいます。だからこんな事はむやみにやってはいけないと規則できめられています。

 会社のみんなは、何も悪いことをしていない自分の友達がやめさせられたのを見て、やめさせたのはよくないと言って反対しました。すると会社のえらい人達は、反対する人を一人一人呼びだして「会社にいられなくするぞ」とおどかしました。みんなはこわくなって、だんだん反対しなくなりました。

 おじさんの友達もやめさせられた中に入っていました。会社をやめさせられた人達は毎日会社の前に来て「私達をやめさせたのはまちがっている。もとのように会社で働かせてください。」とうったえました。
 そして毎日ビラを会社の人達に配りました。

 最初はみんなビラをもらって読んでいました。やめさせられた人達に「会社にもどってこられるようにがんばれ」と応援しました。ところが会社のえらい人はあのビラを受け取ってはいけないと命令しました。テレビカメラを使って誰がビラを受け取るか調べました。みんなはえらい人が恐いので、だんだんビラを受け取らなくなりました。

 えらい人はビラを受け取った人を呼びだして、「言うことをきかないとひどいぞ!」とおどかしました。そして給料をへらしたり、仲間はずれにさせたりしました。会社の中で仲間はずれにされるのはとてもおそろしいことなのです。だからテレビカメラの見張っている門のところでビラを受け取れる人はほとんどいなくなりました。それでもビラを受け取る勇気のある人達は、今でもみんな会社の中でひどい仲間はずれにされています。

どんないじめがあったか歌をうたいます。歌に出てくるいじめられた人はみんなおじさんの友達でした。みんな首になった人を応援していたから会社からいじめられました。

なおやまくんは会社の昼休みにいつもテニスをしていました。いつもはテニスコートのこっちから向こう側にいる人にむかってボールをうつとむこうの人が打ち返す。そうやって楽しんでいました。ところがテニスクラブの人はなおやまくんと遊ぶと会社からおどかされるので、だれもボールを打ってかえさなくなりました。

山本さんは友達の結婚式に呼ばれていたのですが、その友達は山本さんを呼ぶと会社から脅かされるので、やっぱり出ないでほしいと頼みにきました。泣きながら出ないで欲しいとあやまったそうです。

かわばたくんは自分が研究していたものをゴミ箱に捨てられました。試作とは研究して試しに作ったもののことです。

(ひどいね)

 おじさんはギターとマンドリンクラブの部長さんでみんなに楽器を教えていました。おじさんからギターを教わっていた人が脅かされてクラブを止めさせられて行きました。

いじめ」(歌う)

(あーおれ涙出た)(目をこすっている子が何人かいる)


それでも会社を首になったおじさんの友達たちは毎日会社の前に来てビラを配っていました。
最初の頃は会社の人はビラを受け取ってくれて励ましてくれました。嬉しかった。
ところが会社から脅かされ、怖いのでだんだん取ってくれなくなる。テレビカメラで写されているのが怖い。

おじさんの友達はビラを取って欲しくてテレビカメラにうつらないように小さくたたんで渡そうとしました。
それでも受け取ってくれない、知らん顔で行ってしまう。悲しかった。
おじさんはそのころビラを取っている人でした。

「一枚のビラ」

(歌う予定だったが、あがってしまっていて飛ばしてしまった)


 おじさんはこんなことはよくないことだと考えて会社のえらい人達に「こんなことはやめなさい。あなた達のやっているのは弱い者いじめではないか。」と言い続けました。するとえらい人達は「なまいきなやつだ。ほかの者がまねしないようみせしめにしてやろう。」と考えて私を遠くの会社に転勤させようとしました。「言うことをきかないと会社をやめさせるぞ」とおどかしました。それでもおじさんは、「あなた達のやっている事はまちがっている」と言い続けました。そしてとうとう会社をやめさせられてしまったのです。


 それから21年の間毎日辞めさせられた会社の前で門の前にたって歌っています。

えらい人がこわくて、弱い者いじめをゆるしてしまっている会社のみんなに、「勇気を出して悪いことは悪いことだと言いなさい。弱い者いじめをやめさせなさい。」とはげましているのです。

 また、おじさんは会社でおきたような事が日本中でおきたら大変だと考えてあちこちに知らせて歩いています。会社の中の差別やいじめで苦しんでいる人を励ましています。

 みんなが強い者のいいなりになってしまう世の中のことを、ファシズムといいます。

 みなさんがこれから大きくなっていく中で、おじさんのいた会社とよく似たことに出会うかもしれません。そんなとき、「強い者にさからうと損だよ、言うとおりにしていよう。」と言う人がかならずいます。でもみんながそんな考えだと世の中が悪くなってしまいます。

 みなさんが、「悪いことは悪い」とどんなときでも言う勇気を持てば、みんなが仲良く、幸せに生きていける世の中を守ることが出来ます。

「愛のロマンス」という曲を弾きます。

(演奏する)


 最後に大きな橋という歌を歌います。おじさんの友達が作りました。


君と僕との間には目には見えない壁がある。と歌います。目に見えない壁とは、仲良くできない心のことです。
その壁をこわして、みんなの心をつなぐ、仲良くできる、心の橋をつくろうという歌です。


おじさんは外国に行って歌うこともあるので、この歌を英語に変えました。それも混ぜて歌います。

「大きな橋(歌う)

                               2003年2月27日