第3 湯布院贈賄事件について。
1,(1)原告が入手した本件判決文は事件が実行犯の個人的犯罪であるとして書かれている。しかし、本事件の供述調書によれば、以下に示す如く、被告沖電気は
@ 公共事業入札において「営業」と称して同業他社との談合行為を常習とし、
A 談合行為を成功させるために「仲介業者」に工事受注額の3パーセントもの「成功報酬」を支払い、
B その金の一部が町長などに対する賄賂として使われることを認識していた。
(2) 大分検察庁は、これら事実を知ったのであるから被告をはじめとして、関連会社を談合の刑事被告として起訴すべきであるのに原告は未だその事実は認識していない。
(3) もし何らかの理由で検察庁自らが行動を起こさないのであれば、原告が社会正義の観点から刑事告発することも検討せざるを得ない。
(4) 本裁判では、被告が差別、人権侵害のみに止まらず、贈賄、談合という刑事犯罪まで行う違法な企業であることの証拠として示す。
(5)また、上記第2に示した、本年株主総会に於ける原告の質問が、事実に基づいた正当なものであり、被告の暴力排除が、その不祥事を指摘されたときの常套手段であることの証拠としても示す。
2、事件の経過
(1) 沖電気工業株式会社ネットワークシステムカンパニー公共システム事業センター統括マネージャ兼公共営業第2部長 有永 弘と 沖電気九州支社副支社長 中島 繁 は共謀の上、平成12年11月27日ころ、大分県湯布院町が発注予定の無線放送施設設置工事の指名競争入札参加者として、沖電気工業株式会社九州支社を選定、指名するなどの有利かつ便宜な取り計らいしてもらいたい旨の請託を湯布院町長 吉村 格哉に対して行い、その報酬として現金300万円を供与し、町長の同町が発注する土木建築工事等の指名競争入札における入札参加者の選定・指名等の職務に関する職務に関し賄賂を供与した。
(2) 2004年3月24日 大分地方裁判所刑事部は本件 平成15年(わ)第365号、第410号 について
@ 被告人有永及び中島は沖電気が前記工事を落札して、自己の営業成績を上げるため、被告人江藤に渡す金銭が賄賂として被告人吉村に渡されることを知りながら江藤に金銭を交付したものであり、江藤は沖電気に落札させることによって、自己の手数料を得ようとして、吉村に賄賂を供与したもので、いずれもその動機に酌むべき事情はない。
として
A 有永 弘 と 中島 繁 に対し 懲役1年2月 執行猶予3年の有罪判決が出され、この判決は確定された。
(3)この為、被告沖電気は電気工事の営業につき、2004年6月24日から7月23日までの営業停止、その期間に処分に反する行為があると5年間の免許取り消しという非常に厳しい処分を監督官庁から受けた。
3,被告の談合行為について。
(1) 大分県警による本贈賄事件被告、容疑者等に対する供述調書によると、以下に示すように、被告は公共事業の受注に関する「営業」と称して、いわゆる談合行為を少なくとも20年におよぶ長年に亘り同業他社と繰り返していたことが明らかである。
(2)例えば、被告会社九州支社に於いて公共事業に対する営業を行っていた 大谷正義は(本贈賄事件裁判甲30号p11)(以下これら調書は必要に応じ証拠として提出する)
そもそも私共電機業界の営業活動と言いますのは、全てという訳ではありませんが、談合ありきの営業活動を行うのです。
この談合ありきといいますのは、落札業者となる為の条件づくり、つまりは注業者側の意向を取り付けるか、否かということになるのですが、私自身、沖電気工業の営業に携わり約20数年という経験がありますし、平成11年4月1日付けの人事異動で公共営業課の課長に就任しましてから、指名業者間で行われる談合の担当者にもなっています。指名業者間で談合が行われます理由というのは、指名された各業者が正規どおりの入札を実施すると、入札予定価格を超えれば落札できませんし、かといって予定価格を下回れば業者にとっては利益が減少するのは当然です。利益面を考えず、工事を受注することのみを考えれば、入札予定価格を大きく下回ろうが関係ありませんが、採算が取れないと分かった工事を受注する馬鹿な業者は決してありません。
と被告会社、電機業界で談合が日常的に行われていると供述している。
(3) また大谷の上司であり沖電気九州支社副社長 である 中島 繁 は (本贈賄事件裁判乙第46号証 p7)
これについては悪いこととは分かっていますが、私たちの業界は談合をすることが多く、その設計図番が沖電気仕様となっているとすれば他の会社については、沖電気の営業努力を認め落札しようとはせず沖電気に落札を譲るのです。
全ての会社ではありませんが大手無線メーカーについては8社ありますが、そのうち6社については大体談合に応じてくれるのです。
と、これも被告が談合を行っていると供述している。
(4) さらに中島より格上の 本社 沖電気工業株式会社ネットワークシステムカンパニー公共システム事業センター統括マネージャ兼公共営業第2部長である 有永 弘 は(本贈賄事件裁判甲40号証 p37)
しかし3000万円以上の全ての工事の入札価格の決定において判定会議が開催されている訳ではなく、例えばネゴ、つまり談合していて当社の支社がチャンピオンになっている場合には、支社の担当者等から私か竹内に「これで行きますから。」等と入札金額の連絡があることもありますし、その時には金額が原価割れしていないことを確認して承知するのです。もちろんこの反対もあり、チャンピオンになれずに譲る場合には、その旨の報告があります。そしてこれは希なことですが、予定価格を掴んでいる場合でも、その価格ちょうどで入札することはありません。それは落札して契約しても、擬下記の承認が必要な物件もあり、その時議会から疑われないないよう、予定価格よりは若干低めで入札しているのです。
と、これも、談合を行いながら、地方自治体議会の議会からその事実を巧妙に隠蔽する方法についても供述している。
(5)本件湯布院町防災無線工事入札に関しても、上記大谷から
@ 株式会社日立国際電気 中原茂美 (同 甲36号p6)
A 日本無線株式会社 永迫秀高 (同甲34 p8)
B 富士通株式会社 小山明 (同甲 33 p9)
C 東芝 くどん 義夫 (同甲19号p32)
等に対し、それぞれ応札金額を「2億6000万以上でおねがいします。」などと電話で依頼した事実が、大谷、中島の供述、及び談合の相手となった上記企業の社員の供述で明らかである。
(6)また被告は談合行為の成功報酬として「仲介業者」に受注額の3パーセントもの金を支払うことを慣例としているのである。
(有永供述 同甲38号証 p46p47 )
(7)本件については「仲介業者」江藤憲行被告が町長の友人であることから、「天の声」を得ようと画策を依頼したことに端を発している。
この事に関し中島は(同乙第46号証p15)
高額な営業支援に対する報酬の中には当然町長など指名業者の選定に影響力を有する町の関係者らに対する報酬も入っていると私たちも考えています。
報酬が町関係者に渡った場合この報酬は賄賂となるわけですが、通常の場合は私たちの知らないところでこれらは行われるのです。
それで私達としては賄賂を差し上げたのかもはっきりと知らないわけですから賄賂をやったのかと聞かれれば知らない、認識していないと自信を持って答えるわけです。
汚いやり方だと思われるかもしれませんが私たちの業界では良くこういう方法が用いられるのです。
A と被告沖電気は「仲介業者」に支払われる報酬から賄賂が支払われることを認識していながら責任を逃れるために「知らないことにする」という「汚いやり方」をしていると供述しているのである。
(8)また本件贈賄事件では、この「仲介業者」に受注額の5パーセントの金を払うことが被告会社の会議の中で決められおり、この成功報酬の一部が「仲介業者」を経て湯布院町長などに賄賂として渡る可能性が高いことを被告は十分認識しているのである。(同乙号証46号p27)
(9)被告は、会社として直接賄賂を自治体の長に送ることはしていなくても、談合を成功させるための仲介業者を経て「成功報酬」の中から金が渡ることは十分認識しているのである。
(10) 本件贈賄事件とこれまで被告が繰り返してきた行為との違いは、賄賂が受注工事の終了後「仲介業者」を経て「成功報酬」の中から渡されず、受注前の時点で「実行犯」が「立て替えた」金で渡されたというだけである。
4,被告人等の処分について。
(1)本件は、直接湯布院町長に渡った300万円を被告人有永が個人的に準備したとして、有永等が自らの営業成績を上げる為になされたものとし、被告沖電気の刑事責任が問われなかったと思われる。
(2)しかし、「営業成績を上げる」という程度の自らの「利益」の為に、個人的に300万円もの現金を苦労して調達し、贈賄という犯
罪を犯してまですることは不合理であり、被告人有永は「営業をやっている社員に達成感を与えてやりたいために贈賄を決意した。」と供述している。(同乙第43号証 p2)
(3)実際には、賄賂に使われる可能性の高い「仲介業者」への成功報酬の支払いは、被告沖電気営業の慣例、指示で行われていたのであり、この決済は被告の経理で行われているところから、紛れもなく沖電気として不正を行っているのであり、本件はたまたま「実行犯」が賄賂を「立て替え」ざるを得ない状況が発生しただけである。
(4)被告沖電気は有永等被告人を解雇し、退職金も支払わなかったと主張している。
(5)この刑事被告人等は違法な談合、営業活動を慣例としてまで営業に公共事業を受注することを課している被告沖電気の被害者である。
(6) そして、この件もまた、被告の従業員の人権を軽視し、違法な業務を強いることにより発生した人権侵害の一つであると考えられるのである。